カットオーバー直前に"思い込み"が発覚
山下氏の語る反省点でもある、大きな問題が発覚したのはカットオーバー直前の最終テスト時だった。それまでは忙しさを理由に現場のテスト参加が鈍かったこと、自社内での業務処理は商社向けパッケージに当然含まれていると思い込んでいたことが問題につながった。
「テストをしてみて、あると思っていたはずの機能がないことを知り、カバーされない業務があることが発覚しました。正直、どうしたらいいのかと途方に暮れましたが、住商情報システムが"何とかしましょう"と言ってくれました」と森氏。カットオーバーを目前に控え、住商情報システムではアドオンを増やすなどの対応で必要とされる機能を追加。最終的には予定どおりのカットオーバーが実現された。
間に合わせたい一心で無理を重ねたシステムは、どうしても完璧にはなりづらい。「決算前の年次処理でエラーが出たこともあります。実は今でも細かな修正点があります。助けを求めれば即時に修正対応をしていただけるので大きなトラブルにはつながっていませんが、やはり"システム開発にはしっかりした計画と十分な時間が必要。先入観だけで進めたり緊急対応に頼ったりしてはいけない"と痛感しましたね」と森氏は苦笑する。
今後は経営の効率化にもSAPを活用
導入後、SAPは全社で積極的に活用されている。新システム導入時にありがちな現場からの反発も少ないという。「各社員がコストに対する意識を持っていることに加えて、開発時から営業部門のリーダーが声を出してくれたおかげで現場に受け入れる空気ができました。現在は、帳票やレポートをもっと格好良くしてほしいといった要望も出ています」と山下氏は語る。
今後はよりSAPを活用しやすい体制を整え、経営の効率化も実現するのが目標だ。「現在は決算も乗り越え、まずは目標達成という状態です。今後はこれをベースに経営の効率化を考えています。例えば、私の場合、以前は経理部門に問い合わせなければわからなかった情報もSAPを使えば自分で簡単に把握できるようになりました。これも1つの効率化ですが、より活用していくにはどうするべきなのかを考えていかなければなりません」と山下氏。
また、現場での活用という点でサポート情報を整理したいそうだ。「現在、情報システム部の担当者は、サポートに追われている状態です。住商システムとの間で蓄積されているサポート情報を整理して社員に公開することで、ノウハウを活かせる環境を作りたいですね。そのほかのデータも活用を進めていきたいです」と森氏は語る。走り出したばかりの情報システム部門の奮闘はまだまだ続きそうだ。