日産自動車の米国現地子会社である北米日産会社は23日、米国エネルギー省からの16億米ドル(1,540億円)の融資に関して承認を受け、ゼロ・エミッション車および最新鋭のリチウムイオンバッテリーパックの生産を行うため、テネシー州スマーナ工場を拡充すると発表した。

電気自動車実験車両

米国エネルギー省から発表された今回の融資は、「先進技術を利用した自動車製造への融資制度(ATVMLP)」に基づいた最初の3社の内の1社として承認されたもの。ATVMLPは、2007年エネルギー自給・安全保障法136条に基づいて米連邦議会により認可された250億米ドル(2兆4,000億円)の融資プログラム。同社はこの融資を活用し、電気のみを動力源とした排出ガスゼロの電気自動車の生産を行う。

北米日産で総務・財務を担当するシニア・ヴァイス・プレジデント(SVP)のドミニクトルマンは、「本融資は米国に対する投資である。日産は、この融資により高品質で手頃な価格のゼロ・エミッション車を米国に提供することができる。本融資によりスマーナ工場の規模が拡大し、経済的にも素晴らしいニュースとなる」と述べた。

ATVMLPは、米国のエネルギー自給率を上げ、より環境に配慮した輸送手段を提供し、同国の経済を活性化させる車両および技術の開発促進を目的とした融資制度。この融資制度を利用する企業は、財務上および技術上の厳格な条件を満たしている必要があり、承認を受ける前に担保を準備していなければならない。

スマーナ工場の拡充は、環境への影響調査が完了後、本年末から開始される予定で生産開始は2012年後半となる予定という。

同社は、2010年に日本および米国へ電気自動車を投入。米国市場向けは、スマーナ工場に生産が移るまでは日本で生産された車両を供給する。

「スマーナ工場は米国に新しい輸送手段を提供し、同社の将来における非常に重要な役割を担うことになる。私たちは、同工場の従業員がそのための能力と意欲を持っていると確信している。米国での日産の26年におよぶ生産の歴史に新しい1ページが加わることになる」、とスマーナ工場の生産担当ヴァイス・プレジデント(VP)のスーザン ブレナンは述べた。

スマーナ工場では、新たにバッテリー工場を建設するとともに、現行施設を電気自動車製造向けに改修する予定という。本格稼働時は、電気自動車年間15万台、バッテリー年間20万基を生産する能力を持つことになる。

同社の電気自動車は、5人が快適に乗れる広さを備えており、米国の高速道路等のどのような道も走行できる車両という。バッテリー満充電1回あたりの航続距離は100マイル(約160キロ)となっている。

同社は、ゼロ・エミッション車の普及をサポートするインフラ整備のため、政府、地方自治体、電力会社、他諸団体とパートナーシップを締結し、ゼロ・エミッション車の市場投入に向けた環境作りを行っている。

米国では、テネシー州、オレゴン州、カリフォルニア州ソノマ郡およびサンディエゴ、フェニックス、トゥーソン、シアトル、ローリー、ワシントンD.C.とパートナーシップを締結している。また、アライアンスのパートナーであるルノーと共に、神奈川県、横浜市、イスラエル、デンマーク、ポルトガル、モナコ、英国、フランス、スイス、アイルランド、中国、香港とゼロ・エミッション車両(ZEV)のイニシアティブを開始している。