米IntelとフィンランドのNokiaは23日(現地時間)、将来のモバイルコンピューティング機器開発を目指した戦略的提携を発表した。スマートフォンからノートPC、ネットブックまで幅広くカバーし、これらモバイル機器で無線ブロードバンド通信によるユビキタス環境構築を目指す。Intelアーキテクチャをベースにソフトウェアを構築し、さらにNokiaはIntelに対してHSPA/3Gの技術ライセンスを供与するのが今回の発表の趣旨となる。

米Intelシニアバイスプレジデント兼ウルトラモビリティ部門ジェネラルマネージャのAnand Chandrasekher氏

提携に先立ち、両社は23日早朝(米国時間)に記者会見を開いて提携内容について説明した。米Intelウルトラモビリティ部門担当ジェネラルマネージャーでシニアバイスプレジデントのAnand Chandrasekher氏は、16億台市場の携帯電話や2008年に台数でデスクトップPCを逆転したノートPC、そして新カテゴリのネットブックなどモバイル環境が急速に拡大しつつある現状に触れ「モバイル機器にはより広帯域なブロードバンドワイヤレスな環境が必要だ。いつ、どこでも接続できる環境、そしてそれをより高いパフォーマンスで実現することが重要」と両社の役割を強調する。

提携におけるもう1つのポイントがソフトウェアだ。今回はベースとなるハードウェアはIntel、無線通信技術はNokiaという位置付けだが、その上で動作するソフトウェアはLinuxなどオープンソースの製品を念頭に置いている。例えばIntelではMoblin Projectを長年にわたって推進しており、一方のNokiaではN810 Internet Tabletに採用されているMaemoというLinux派生プラットフォームを使用している。Nokiaのデバイス部門担当エグゼクティブバイスプレジデントのKai Oistamo氏は「両社の長年の協力関係、そしてオープンソースへの多大な投資など共通点がある。今回の提携もその延長で自然な成り行き」だと説明する。

「Moblin v2.0 Beta」

米Bloombergが報じた事前の情報では、IntelがNokiaに対してモバイルプロセッサを供給する可能性が指摘されていた。だが蓋を開けてみればそうした具体的な話は一切なく、早朝の記者会見ではその部分に質問が集中した。Chandrasekher氏は「今回の提携内容は、(1) Intelアーキテクチャをベースに将来のモバイルデバイスを作る、(2) ソフトウェア技術の開発、(3) NokiaからのHSPA/3Gの技術ライセンスの3点のみで、具体的な製品を語る段階ではない」と述べ、製品化を含む次のステップへの移行時期についても回答を避けた。また、この種のモバイル機器へのWiMAX搭載については「今回はNokiaからライセンスされる技術の採用のみ」(Chandrasekher氏)となりそうだ。

次にNokiaが自社のスマートフォンで採用しているARMプロセッサに話題が振られると、Oistamo氏は「ARMとの長年の提携関係に変化を与えるものではない」と述べ、Intel製プロセッサ採用については明言していない。Intelが開発中の省電力プロセッサの次世代版「Moorestown」(開発コード名)をプッシュし、Atomプロセッサの利用範囲拡大を狙っていくのが今回の趣旨だとみられていたが、まだそうした段階にはないようだ。両社では技術提携という点を強調しており、具体的な製品やマーケティングでの提携はまた次の機会ということになりそうだ。