イギリス庶民の味方で、伝統的なファストフードであるフィッシュ&チップス。世界的に有名な料理だが、失礼を承知であえて言わせていただくなら「イギリスの料理だし、それなりなんでしょ? 」と思っている人も多いはず。しかーし、さすがは本場。驚くほどおいしいフィッシュ&チップスもあるのだ。ここでは(私的)三ツ星クラスのお店を紹介していこう。

チップスは"ポテチ"じゃないよ

フィッシュ&チップス。まだ食べたことがない人からすると、「チップス」と聞くと、ポテトチップスを連想するかもしれない。確かに、日本のパブでチキンナゲットのような白身魚のフライとポテトチップスを盛り合わせて出している店もあった。しかし本当は、このチップスはフライドポテトのこと。イギリスではポテトチップスのことは「クリスプ」と呼ぶのだ。

ででーんと登場する迫力満点のフィッシュ&チップス

そして、フィッシュ&チップス未体験者からすると、"フィッシュ"のほうも意外なルックスのはず。前述のような手でつまんで食べられるサイズを想像していると度肝を抜かれるだろう。イギリスでは、長さ20cmほどもあろう巨大な白身魚のフライとして供されることもしばしば。

この巨大なフライの正体(巨大でないこともあるが)、大抵はcod(コッド)と呼ばれるタラや、haddock(コダラ)、plaice(カレイ)などの白身魚が使われる。これらの魚に、小麦粉や卵、水をあわせた衣をつけて油で揚げる(サクッとした食感を増すため、ビールを入れる場合も)。

この料理、19世紀後半頃から引き網漁が盛んになり、魚が安く入手できるようになったことからよくつくられるようになり、カロリーが高いことから労働者の日常食として定着していったのだという。店内で食べると7ポンドくらいで、持ち帰りの場合は4ポンド程度。

その日にとれた魚を使うのがおいしさの秘密

フィッシュ&チップス専門店「costas」(コスタス)

まずは、映画『ノッティングヒルの恋人』の舞台としても知られるノッティング・ヒル・ゲート駅から10分ほど歩いた場所にあるフィッシュ&チップス専門店「costas」(コスタス)。『Timeout』をはじめとした数々の新聞や雑誌等で紹介されている人気店である。常に店内は満員だが、ちょっと大通りからはずれた場所にあるので、有名店にしてはわりと穴場で。イートインとテイクアウトが選べ、レストランは明るくて雰囲気もよい。

オーナー自ら調理

すると、オーナーさんが「うちは、他の店ではないこだわりが沢山あるんだよ! 」と陽気に話してくれた。「まず、その日にとれたばかりの魚を注文と同時に揚げていることがポイントだね。しかも、動物性油脂は一切使わないんだ。ただでさえ脂っこい料理だからね」。

揚げたての魚はフワフワで、衣は見事にカリッカリのサックサク。ポテトも脂っこくなくて、「カロリー高いよねぇ~」と思いつつ、手が伸びてしまうおいしさ。ボリューム満点の1皿は、8ポンド程度。

また、フィッシュ&チップスの引き立て役であり、それがなければ成り立たない存在がモルトビネガー(麦芽酢)である。タルタルソースやケチャップ、カレーソース、マヨネーズ、塩・胡椒などをかける人もいるが、モルトビネガーは最も人気のある代表的な調味料。日本の米酢と比べると酸味が少なく、ほんのり感じられる甘みが特徴で、これをたっぷりと浴びさせるようにかけていただく。ビネガーの酸味が脂分を洗い流してくれるようで、さっぱりと楽しめる。

「costas」のフィッシュ&チップス。モルトビネガーは欠かせない!!

この店のすぐ近くにある「GEALES RESTAURANT」というフィッシュ&チップスを中心に扱うレストランもオススメ。こちらは1皿12ポンド程度と少々値が張るので、年齢層も高め。

ちょっと贅沢したいときは「GEALES RESTAURANT」へ