マイクロソフトのボリュームライセンスは、「複雑でよくわからない」「どれを選べばいいのかわかりにくい」「大企業向けで中堅・中小企業には関係無い」などといった印象を持たれやすいのが実情だ。実際、筆者が以前勤めていた会社でも、複雑さのため導入を見送った経緯がある。
しかし、現在のボリュームライセンスはPCが1台からでも利用でき、中堅・中小企業にとってもメリットがあるのだ。
最低3ライセンスから利用可能
何種類もあるボリュームライセンスの中でも中堅・中小企業にお勧めなのが、Open License(オープンライセンス)だ。これは3ライセンスから利用できるが、必ずしも「PCが3台以上」を意味しない。
例えば、Windows VistaにOffice 2007にインストールすれば、合計2ライセンスとして数えられ、ここにVisioやWindows ServerのCAL(クライアント・アクセス・ライセンス)など、もう1ライセンスを加えれば適用される。つまり、対象製品が3ライセンス以上という条件さえ満たせば、1台のPCでも利用できるのだ。
ソフトを資産として活用できるボリュームライセンス
小規模な企業や部門単位、個人事業者がPCを導入する際、プレインストールモデルを購入するケースが多いのではないだろうか。実はこれには意外と見落とされがちな短所があると、マイクロソフト ゼネラルビジネスマーケティング統括本部マーケティング推進部シニアマーケティングエグゼクティブの福富隆浩氏は指摘する。「プレインストールPCの場合、OfficeなどのライセンスはPC本体に付随します。そのため、例えば故障やアップグレードなどでPCを買い替える場合、ソフトも購入し直していただかなくてはならないのです」
また、ビジネスシーンではPowerPointは必須ツールだが、プレインストールモデルでは、PowerPointを含まないOffice Personalをインストールしているケースがほとんどのため、PowerPointを別途用意しなければならない煩わしさもある(一部メーカーではPowerPoint付きの場合もあり)。
一方、ボリュームライセンスではソフトを資産として活用できるメリットがあると、福富氏は語る。「ボリュームライセンスの場合、ソフトの利用権はPC本体から独立していますので、PCを買い替えた場合でもソフトはそのままご利用いただけます。つまり、購入いただいたソフトを資産としての有効活用することが可能になるのです」
企業によっては、ポリシーや業務システムとの兼ね合いなどで、最新版のOfficeではなく、旧バージョンを使用しなければならないケースもあるだろう。その場合でも、ボリュームライセンスは効果的だ。「プレインストールPCではOfficeは常に最新版となり、結局社内では複数バージョンが混在することになるため、管理が複雑になってしまいます。ボリュームライセンスには、以前のバージョンを利用できるダウングレード権がありますので、社内のバージョン統一も容易です」(福富氏)
以前のバージョンから将来最新版にアップグレードする場合も、ボリュームライセンス購入時点の最新版までであれば自由にバージョンアップできる。福富氏は「ダウングレード権による社内バージョンの標準化に加え、計画的なバージョンアップにも対応できるのが、オープンライセンスの強みです」と強調する。
なお、後述のソフトウェアアシュアランス(SA)と組み合わせることで、将来の最新版へのバージョンアップに備えることも可能だ。
メディア類の管理が容易
プレインストールPCやソフトウェアパッケージを購入して、メディアやマニュアル類の管理に手を焼いた経験は、誰しも一度ならずあるだろう。ボリュームライセンスは、そんな悩みからも解放してくれる。「ボリュームライセンスはソフトの利用権を購入いただくもので、インストールメディアやマニュアルなどは必要に応じて別途ご購入いただく形になります。社内での管理・保管が容易になりますし、カジュアルコピーの防止など、コンプライアンス対策としても有効です」(福富氏)
「そうはいっても、ボリュームライセンスだとインストール作業が面倒なのでは?」と思う読者もいるだろう。福富氏も「確かに、ボリュームライセンスではプレインストールPCと比べ、何らかのインストール作業が必要になるというデメリットはあります」と認めながらも、作業を軽減するさまざまな方策を用意していると説明する。
「例えば、社内サーバに管理者用インストールポイントを作成して各PCに配布する方法や、当社が提供する自動インストールツールをご利用いただく方法があります。他に、メーカーや販社などが提供するキッティングサービスもご利用いただけます」(福富氏)。
2台目のPCや自宅での利用も可能
ボリュームライセンスにはさらに、意外と知られていない利点もある。例えばオフィスではデスクトップPC、客先などではノートPCを使用するようなケースでも、それぞれのPCのソフトは1つのライセンスで利用可能なのだ(ノート+ノートの組み合わせも可)。これに加えて、自宅のPCにも同じライセンスで同じソフトをインストールできる無償のオプションを利用できる。「外出先でも自宅でも同じソフトをご利用いただけるのも、ボリュームライセンスのメリットです。つまり、さまざまなご利用シーンを想定したライセンスプログラムであり、柔軟な運用が可能なのです」と、福富氏はメリットを力説する。