エンジニアとしての転機

ディスカッションの最初のテーマは「エンジニアとしての転機になった出来事」。よしおか氏の場合、最初はハードウェアベンダであったDECの日本法人に入社し、その後Oracleに転職している。当初からソフトウェアの開発がやりたかったという同氏がハードウェアベンダに就職した理由は、「当時はソフトウェアを作りたらハードウェアベンダに就職するのが王道だった」からだという。

その後Oracleに転職してデータベースエンジンの開発や日本語化に携わり、オープンソースソフトウェア(以下、OSS)をビジネスにするという動きが出てくる中でミラクル・リナックスを立ち上げ、CTOとしてLinuxディストリビュージョンの提供に関わってきた。

「オープンソースの隆盛で今は自分の意思さえあれば自宅でも開発ができるし、そのことを履歴書にも書けます。10年前はソフトウェアを作りたいと思ったらどこかの会社に所属するしかなかったんです。今は自分のキャリアを自分で設計できる時代になったと感じています」(よしおか氏)

また、同氏はひが氏からの「今と昔のどちらが幸せか」という質問に答えて次のように付け加えている。

「どちらがいいかは人それぞれだけど、今自分が選ぶとしたらOSSです。25年前は全ての人やリソースが社内で完結していたけど、OSSの時代は専門家が世界中にいて、会社に制限されずに誰でもアクセスできる。チャンスはOSSの方が大きいです」(よしおか氏)

独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)研究員 よしおか ひろたか氏

一方、谷口氏がライブドアに転職したきっかけは、渋谷PM(渋谷Perlモンガーズ: 渋谷を拠点とするPerl ユーザのコミュニティ)の勉強会でオンザエッジ(現ライブドア)の人々と知り合ったことだという。

「この人達と一緒に働きたいと思いました。それで誰を目指すのかと考えたときに、現Six Apartの宮川達彦さんを知り、この人のようになりたいと思いました。今は当時に比べると勉強会などが活発で、人を探すチャンスはたくさんあると思います」(谷口氏)

谷口氏の場合、転職後は収入は大きく減り、勤務時間は大幅に増えたとのことだが、それでも「楽しくて仕方がなかった。そこには自分の求めていたものがあった」と語っている。

株式会社ライブドア メディア事業部開発部 システム開発2グループ シニアマネジャー 谷口公一氏

ブログはエンジニアにとって大きな武器

勉強会やOSS活動など、社会との関わり方もエンジニアとして生き残るためには重要となる。この日の参加者に挙手を求めたところ、ほとんどがブログを持っており、8割以上が外部の勉強会に参加したことがあることが判明した。それを見たよしおか氏は、「この時点でみなさんはすでに武器を2つも手に入れている」と指摘している。

登壇者4名も全員がブログを公開しているが、ひが氏などは意外にもブログを書くのは嫌いだと漏らした。

「本も書いていますけど、もともと文章を書くのは好きではないんです。でも読んでもらって『ためになった』と言われたら、やってよかったと感じます。コードを書くのもそんなに好きじゃないんですよ。人のためになることが好きで、人に喜んでもらえるから続けていけます」(ひが氏)

株式会社電通国際情報サービス 開発技術センター シニアITプロフェッショナル ひがやすを氏

一方で楠氏はブログの良い点として、もし間違ったことを書いてしまってもそれを指摘して直してもらえることを挙げている。それに加えて、「世の中どこに味方がいるかわからない。(ブログへのエントリーがきっかけで)ときには物事を自分の納得できる形にもっていくための力になることもあると思う」とも指摘している。

マイクロソフト株株式会社 技術統括室CTO補佐 楠正憲氏

今やブログが社会に対して与える影響力が小さくない時代になってきている。エンジニアにとっては極めて身近で強力な武器と言えるかもしれない。