マイクロソフトが今年中の発売を予定している次期OS「Windows 7」は、現在製品候補(RC)版として広く検証が行われている。今回、マイクロソフトでは改めてWindows 7について解説。Windows 7の開発の背景などが説明されたほか、コンシューマーユーザーと企業ユーザーにとってのWindows 7のメリットを訴求している。
Windows 7までの流れ。念のために書いておくと、Windowsは、Windows 1.0、2.0、3.1とバージョンを重ね、Windows 95/98/Meがバージョン4、Windows 2000/XPがバージョン5、Windows Vistaがバージョン6という扱い。それに続くWindowsということで、7の名称が与えられている |
Windows 7は「実現不可能なもの以外はすべて盛り込みたい」
マイクロソフトが、これまでWindows 7で繰り返し訴えてきた特徴の1つが、現OSのWindows Vistaで動作するハードウェアやソフトウェアの多くがそのまま動作する、という点だ。同社コマーシャルWindows本部の中川哲本部長は、「Vistaと同じLonghornカーネルを採用しており、CPU・メモリ・I/Oの管理や、デバイスドライバモデル、ネットワークの管理など、基本の部分はVistaと同じ」だとしており、そのため「互換性が非常に高い」(中川本部長)OSになる予定だ。
Windows 7開発に際し、同社ではユーザーの声を聞き、学んで、品質と土台作りを重視したと中川本部長は語る。ITプロや開発者の力を最大限に引き出せる、ユーザーの日常生活を楽しく、わくわくさせる――そんな開発のポイントがあったという。
実際にマイクロソフトは、世界200カ国・1,100万のVistaユーザーに対して調査を実施。600万台のPCからインターネット経由でデータを受信し、ユーザーの環境や使うソフトのデータ、のべ39,200セッションを収集した。その中から1,600のPC環境を選りすぐり、さらに調査を実施。それをベースに、200カ国の2,600ユーザーに4万時間にわたるリサーチをかけたという。その後、ユーザーの利用シナリオを100弱作り、どういったシナリオで必要な機能を盛り込むかを検討して、600の機能を作ってテストを行った。そこから機能を絞り込んで、Windows 7へと搭載していったそうだ。米国本社のWindows 7開発チームも、「ユーザーからの要望の内、実現不可能なもの以外はすべて盛り込みたい」という意気込みで開発したという。
日本市場向けには、たとえばWindows 7のインタフェースであるAeroに日本向けを用意し、日本の風景や起動音の琴などを盛り込んだ。「些細なことだが、日本の民族性、文化を取り込みたい」(中川本部長)という意識で、社内でフォトコンテストを実施して、優秀作品も1枚選び入れているそうだ。
現在、Windows 7 RC版には、「10%弱の英語の文章や単語が残っている」(同)状態だ。製品版ではすべて日本語化されるが、これには理由があるという。従来のWindows OS開発では、英語版と平行して日本語版を含む各国語版を作り、各国語版の進捗に合わせて全体の進行が遅れることもあったそうだ。Windows 7では、「何語版でもないWindows」(同)を作り、そこに言語ユーザーインタフェースを追加する、という形を取っているという。言語UIの最初に作られるのは英語版で、それを翻訳するために、英語が残っているが、各国語版の進捗が必要なくなったことで、全体の製品品質を向上させることができるとしている。
さて、Windows 7の製品版では、一般ユーザー向けにはWindows 7 Home Premiumを推奨。企業ユーザー向けのメインストリームはWindows 7 Professionalが用意されるが、同社ではその上のWindows 7 Enterpriseの利用を推奨する。一般向けには企業向けと同じProfessionalも利用でき、さらに全機能を搭載したWindows 7 Ultimateも用意される。ユーザーはこの中から自分に適したものを選んでいくことになる。
Windows 7に用意されたエディションは大きく分けて4つ。Starterは限定的なバージョンのため、一般的にはHome Premiumが利用される。企業向けはProfessionalよりもEnterpriseを同社は推奨している |
Windows 7 RC版は、中川本部長の同社でのキャリアにおいて、「今まで開発されてきたどのベータよりもWindows 7のベータが、どのRCよりもWindows 7のRCが高いクオリティで提供できるている」と自信を見せる。実際に、利用者からのフィードバックも好意的だという。
また、同社が注力する互換性に関しては、新たに「Compatible with Windows 7」を実施する。これは、従来「CERTIFIED FOR Windows Vista」「Works with Windows Vista」として実施されていたロゴプログラムを刷新したものだ。従来は、ハード/ソフトウェアがVista上で動作することを、第三者機関にテストしてもらい、それで互換性の証明としていたが、新しいロゴプログラムでは、セルフテストツールをマイクロソフトが無償で提供。
自社内でテストを行い、その結果をマイクロソフトに送信することで、互換性の有無がテストできるため、開発者側は自社内でのテスト工程以外のコストがかからず、容易にロゴを取得できるようになるため、これまで以上にロゴを取得した製品の登場が期待できる。中川本部長は、「ロゴを張った製品を一つでも多く出したい。パートナーと一緒に、たくさんのアプリが対応していることを示し、パートナーエコシステムを作りたい」と意気込みを語っている。
Windows 7 RC版の利用期限は2010年5月31日まで。ただし同年3月1日からは警告が出て2時間ごとにPCが終了してしまうので、あまり実用には向かなそうだ。製品版は今年中にリリースされる見込みだ。