約40mの高さまで工事が進んでいる「東京スカイツリー」

現在の東京タワーに代わって、2012年春より首都圏のテレビ放送用電波塔となる「東京スカイツリー」の建設が、都内・墨田区押上で昨年7月より行われている。新タワーの全高は610.58mだが、塔体の鉄骨が現在約40mのところまで組み上げられており、最近では建設現場から少し離れた場所でも工事用クレーンの姿などを見ることができるようになった。

現場の近くでは建設中の新タワーに携帯電話のカメラを向ける人の姿が見られ、日曜日ともなるとカメラを携えた写真愛好家や建築ファンが、日本一の高さとなる建造物の工事風景を記録しようと大勢訪れている。

建設現場周辺では、工事の様子を眺めるために足を止める人も多い(4月撮影)

そんな中、毎月「定点観測」形式でこの建設現場の撮影を行ってきた写真家・小野寺宏友さんが、定期的に現場の写真を撮りたいと思う人に向けて撮影ノウハウを伝える「第1回 東京スカイツリー定点観測写真講座」を17日に開催した。小野寺さんはこれまでも、時間や季節を変えながら同じ場所で風景を撮影した作品を多数手がけており、東京スカイツリーも絶好の題材と考え、着工前から撮影を行ってきた。

会場となったのは、墨田区内で周辺観光情報の提供を行っているカフェ「枕橋茶や」。講座に参加したのは地元の人が中心で、中には自宅のベランダから建設現場が見えるという人も。自分たちの街に日本一のタワーができるというまたとない出来事であり、これを写真に収めておかない手はないという思いで撮影を始めた、あるいはこれから始めたいという人たちが集まった。

墨田区役所近く、東武伊勢崎線の高架下にある「枕橋茶や」

参加者は地元の人が中心。撮影した画像をブログに掲載している人も

最も重要なのは「撮影場所」

例として、3月に東武伊勢崎線業平橋駅のホームから撮った写真を見せる小野寺さん。手前に新タワー自体の低層棟が建ち始めており、その先にあるタワーの塔体が見えない。この低層棟は1月には無かったものだが、これだと「定点観測」にはならなくなってしまう

定点観測を行うにあたって、最も重要なのは撮影場所の選択だ。現時点で建設現場がよく見える場所であっても、完成までの間に手前に高い建物が建ってしまったら、それ以降の撮影場所を変えなければならなくなってしまう。とはいえ、変化の激しい東京でこの先数年の土地利用の変化を予想するのは難しい。そこで小野寺さんは、道路や川、公共の広場など、建物が建つ可能性の低い土地を前にして写真を撮ることを勧めている。幸い、新タワーの建設地のすぐ南には北十間川が流れており、この空間をうまく利用することができる。

また、撮影地点から新タワーまでの距離も重要だ。現場のすぐ近くで写真を撮っている人も多いが、現在はまだタワーの高さが低いから支障がないものの、工事が進んでタワーが高くなったとき、レンズの画角に入りきらなくなってしまう可能性がある。特に、撮り貯めた写真を後でパラパラマンガのようにして楽しみたいと考えている人は、写真の上のほうに十分な空間を残しておく必要がある。

カタログや説明書などに書かれているレンズの焦点距離を見れば、必要な撮影距離を求めることができる。例えば、普及価格帯のデジタルカメラで一般的な、広角側の焦点距離が35mm(35mm判換算)のレンズの場合、カメラを縦に構えても画角はおよそ54度。新タワーの頂点までを一枚の写真に収めようとすると、タワーの中心から最低でも450m程度は離れる必要があるが、それだとギリギリで空を写真に入れることもできなくなるので、実際にはもう少し余裕をみて離れておく必要がある。

地図で距離を測ったり、タワーの縮図を書いたりして、自分の撮影地点から完成したタワーを見るとどのくらいの角度になるかを求める

今回の講座の中では、地図上で距離を測ったり、作図をしたりして、撮影距離とレンズの画角の関係を学ぶ時間が設けられた。参加者は自宅から建設現場までの距離を測り、自分のカメラで新タワーを完成まで無事に撮影できるか確かめていた。