5月12日と13日の2日間、横浜市のパシフィコ横浜で無線通信技術・研究開発の専門展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2009」が開催された。同展示会初日に行われた専門フォーラムの中で、KDDIの湯本敏彦氏はモバイルサービスの状況と3.9G(3.9世代)への取り組みなどについて講演を行った。
冒頭では今年の春モデルや同社携帯電話の新ブランド「iida」などを紹介。これらの新製品で、「感性の強い」ユーザーに訴求する狙いだ。KDDIの4月末日時点の携帯電話契約数は5万7,500の純増となっているが、今後iidaなど新商品や「春ごろから安定してきている」(湯本氏)KCP+端末により、盛り返しを図る狙い。
また、au携帯電話向けのセットトップボックス(STB)「au BOX」について説明。「高校生の8割くらいは自分の部屋にテレビはあるが、同じく8割くらいはPCを持っていない」ことから、「高校生をターゲットに」開発・サービスを行ったと語った。このほか、「Green Road Project」のキャンペーンで、約400万円(400万キロメートル分)が集まったことも紹介した。
続いて、室内の電波環境改善の施策とした"フェムトセル"について説明。現状フェムトセルは、「中途半端な電波状態」が最も課題となっており、フェムトセル導入するには「マクロ(基地局)からフェムトへの切り替えや干渉が課題。端末側の切り替えも工夫が必要」と述べた。また、2009年度後半に"ユーザートライアル"という形でフェムトセルを試験的に導入することを明らかにした。
またトラフィックの増加については、音楽ダウンロード、SNSやブログ、動画試聴などPCのサービスを携帯で利用するケースが増えているため、今後もトラフィックは伸びる傾向にあり、2012年頃には現在の5倍程度と予測しているという。湯本氏は「3.9Gの必要性はトラフィック収容である」と述べ、トラフィック収容が増すことによって、将来的にはブロードバンドのインターネット環境に接続して使用する「au BOXはなくなる」との見解を示した。
このほか、3.9Gの移動通信システムとしてLTE採用した経緯について、「LTE(Long Term Evolution)とUMB(Ultra Mobile Broadband)は技術面での差はあまりなく、ベライゾンをはじめ海外のキャリアがLTEを選んだため」と説明。また、「LTE導入後も音声(VoIP)ではCDMA 1Xを当分使う」と語った。来年の後半にはEV-DO Rev.Aをマルチキャリア化して容量増と高速化を図り、LTEは2012年の後半に導入する予定だという。
最後に湯本氏は、"いつでも、どこでも、誰でも"ITの恩恵を実現できる「ユビキタス社会」から、ITが生活に自然に溶け込む「アンビエント社会」を目指した、PULL型からPUSH型サービスの取り組みについて紹介した。この取り組みでは、ユーザーの状態、環境、過去の行動履歴などに応じ、最適な情報やサービスを最適な形で提供し、"安全、安心、快適"な社会の実現を目指している。
しかし、そうしたサービスを実現するためにはユーザーの多くの情報が必要となるという。湯本氏は、技術的には実現可能だが、「オペレータ(通信事業者)がそこまでの情報を牛耳っていいのかという議論がもちろんある。お客様にとって余計なおせっかいにならない程度にしなければいけない」との見解を示した。
(2106bpm/K-MAX)