アニメ・ゲーム音楽レーベル「Peertone」は、レーベル第一弾企画として、VOCALOID2 キャラクター・ボーカル・シリーズ「鏡音リン・レン」の人気楽曲を「鏡音リン・レン」の声を担当している声優・下田麻美がカバーするというCDアルバム「Prism」を6月10日に発売する。そこで今回は、アルバムの発売に先駆けて、下田麻美を直撃! 今回のアルバムにかける意気込みや想いを語ってもらった。

6月10日に発売される「Prism/鏡音リン・レン feat. 下田麻美」のジャケットイメージ。詳細についてはこちらのページをチェックしてほしい


下田麻美が語る「Prism / 鏡音リン・レン feat. 下田麻美」

――この企画を初めて聞いたときの感想を教えてください

下田麻美

「この企画のお話をいただいたのは、実は昨年の夏だったんですね。なので、CDのリリースまでにはけっこう時間がかかってしまったのですが、最初にお話を聞いたときは、また『リン・レン』と一緒に仕事ができるという『驚き』と『喜び』、さらにキャラクターソングではなく、声優・下田麻美としてアルバムを出させていただけるということに対しても、同じく『驚き』と『うれしさ』がありました。本当にありがたいお話をいただいたと思っています」

――応募された曲の中からは、どういった観点で選曲しましたか?

「今回、『ピアプロ』というサイトで、一般の方から鏡音リン・レンを使って歌わせた曲を募集し、その曲を下田が歌います、という風に告知されたのですが、1カ月という短期間で、何と合計278曲ものご応募をいただきました。この公募という企画で、一体どれくらいの反応があるのか、最初はわからない部分が多かったのですが、募集を開始してからすぐにたくさんのご応募をいただき、その数だけでも、リンとレンの人気、そしていろいろな人が愛してくれているんだなと感じました。とはいえ、歌わせていただけるのは1曲だけなので、スタッフさんに手伝ってもらいながらですが、下田本人が自分で聴いて、セレクトさせていただきました。選考のために、1カ月くらいかけてずっと聴いていたのですが、みなさん本当に素敵な曲を書いてくださっていたので、その中からたった1曲しか選べず、しかもそれを選ぶのが本当に私なんかでよいのかというプレッシャーも感じました。でも、私にできることは、自分がトコトンまで歌いたい!って思う曲を探すことだったので、ちょっと古い表現ですが、ビビッときたものをセレクトさせていただきました」

――それでは下田さんが選考された曲について教えてください

「今回の企画で選ばせていただいた曲は、さむそんPさんが作られた『イタズラムスメ』という歌でございます。時はもう21世紀なんですけれど、何とも昭和な雰囲気があふれた、"GS"というジャンルの曲になります。私自身、小さい頃から"懐メロ"というジャンルの曲がすごく好きだったんですよ。親によく聴かされていたというのもあるのですが、たぶん、時代に関係なく、"GS"のノリは個人的にあっていたのだと思います。なので、この『イタズラムズメ』を聴いたときに、『ああ、私が好きな曲調だ』って雰囲気をすごく感じました。なおかつ、『イタズラムスメ』の歌詞が、思春期の女の子の素直になれない気持ち、恋をしはじめたばかりで素直になれない感情が、ストーリー性をはっきりと持たせつつ、面白くおかしく描かれていまして、『あ、これを自分が歌で表現したらどうなるのかな』、『どんな風に歌おうかな』って想像しただけで楽しみがすごくふくらんだ歌だったんですよ。ほかにも実は最終段階で20曲ほど候補にあがっていまして、すごく悩んだのですが、最終的には、本当に私の好みで選ばせていただきました(笑)」

――すでにレコーディングは終わっているというお話ですが、実際に歌ってみた感想はいかがですか?

「『VOCALOID』は、リン・レンもそうですし、初音ミクちゃんだとか巡音ルカさんだとかもそうなのですが、特にキャラクターの公式設定がないんですよ。たとえば『この子は必ず元気な女の子で前向きじゃなきゃいけない』とか、『この子は無口な女の子なんだ』とか、そういう決められた設定がない分、ユーザーさんやファンの方が自分の思う理想の視点で彼女たちを作り上げていけるというのが、ヒットした秘訣ではないかと思っているのですが、それゆえにやっぱりインターネットに上がっている曲も、リン・レンという一つのキャラクターであるにも関わらず、すごくいろいろなストーリー性やキャラクター性が垣間見える曲になっているんですね。実際、本当にいろいろなジャンルの曲を作っていただいていますし、声も『ジェンダーファクター』という機能を使って幅を持たせることができるんですよ。すごく子どもっぽい声にすることもできるし、大人びた声に変えることもできる。そういったことが、作る方の好みや曲にあわせられているので、リン・レンの曲をカバーしましょうといっても、曲によって声質が全部違うんです。でも実際に歌う際は、いずれの曲もユーザーさんやファンの方に支えられて人気になっている曲なので、そういう方たちのイメージや制作者の方がその曲に込められた想いといったものを、絶対に崩したくなかったんですよ。なので、すべての曲ではないのですが、基本的には作曲家さんが現場にいらっしゃっているときに、その曲のイメージやご要望をはっきりとお伺いしました。また、映像と歌が合わさってヒットした曲もありますので、ファンの方がどうしてこの曲を好きになったのかを理解するために、実際に動画サイトさんのほうで前もって映像と一緒にチェックして、自分の中でのイメージをしっかりと膨らませながら、レコーディングさせていただいています」

――実際に歌ってみて歌いづらいと思ったことはありますか?

「えー、数え切れないほど(笑)。このレコーディングにおいて、私はやっぱり"人間"なんだなって実感がすごくわきました。鏡音リン・レンは、私の声ではありますが、機械か人間かというところに決定的な差があります。それぞれに長所や短所が必ず存在すると思うのですが、リンやレン、VOCALOIDの強みは、『絶対に音を外さない』『どんな高い音でも、逆にどんな低い音でも出せる』というところで、だから自分が本当に作りたい歌を作ることができるんだと思います。人間は誰もがそうだと思うのですが、自分のできないことを簡単にやってのける人に対して、"すごい"っていう尊敬の感情が生まれるじゃないですか。今回収録させていただいている曲にも、音域的に高いものもあるのですが、そういう曲が人気になったポイントには、『こんな高い声がこんなにきれいに出る』という、リスペクトの気持ちが絶対どこかにあると思うんですね。なので、それをまざまざと見せつけられことで、リン・レンは本当にすごいんだなっていう尊敬の気持ちを、実際に自分で歌ってみてすごく感じました。なので、高い歌に関しましては、キーを変更させていただいた曲もありますが、自分のできる限りを振り絞って頑張っております(笑)」

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