学校のバックエンド処理でクラウドを利用するにあたっての課題として、中村氏は国内にサーバが設置されることを挙げた。 「学校の外に出す、ASPやクラウドを利用するということが受け入れられた場合でも、海外サーバを利用することが受け入れられる可能性はとても低いでしょう。日本の法律が及ぶ範囲にサーバがあることが重要です」と語る中村氏は、クラウドの持つ課題も指摘している。
「まず、ダウンタイムの問題があります。AmazonのSLAでは0.5%のダウンタイムとなっていますが、年間で考えると0.5%は約4日分です。ビジネス利用としては難しいですね。また、データベース設計を1からやり直すのは大変なので、リレーショナルな構造が利用できるようにならないのか、という問題も残っています。リレーショナルDBになれば多くのベンダーが使いやすくなるでしょう」
また、ユーザーの誤操作をフォローするためのバックアップをどの程度の頻度で作るべきなのか、ネットワークを介することでのレスポンスの低下をどう補うのか等、実用化にあたっての課題はまだまだある。現在はマイクロソフト側からSLA(Service Level Agreement)や料金についての発表も行われていないため、製品化スケジュールは未定だが、クラウドには大きな期待が寄せられている状態だ。
ASPモデルでは、某ホスティングメーカーのデータセンターを利用ているそうだが、年々、ユーザ数が増加するに伴い、負荷分散及びスケーラビリティ確保のため、プラットフォームの増強を都度行っているが、コスト面、運用管理面の負担が年々大きくなってきているという。
「データセンターの拡張は非常に難しい状態にあり、コスト面でもこのまま進んだ場合には非常に大きなものになって行くと試算していますが、そもそもすでにスケールアップの限界が近いのではないかという見解もあります。会計のような季節によってトラフィックが変化するシステムでは最大時に合わせてリソースを確保しなければならず、無駄が多くなります。ユーザーにとってクラウドという言葉はまだそれほど魅力的ではないかもしれませんが、サービス提供側としてはぜひ活用したいものなのは確かです」と技術面以外での課題も多くあるが、期待も大きいことを中村氏は語った。