法整備やインフラの整備を待つ一方で、グレープシティではクラウド利用についても積極的に取り組んでいる。「元々の発端は、3種のパッケージを並行して開発・サポートするのではなく、効率化を図りたいというものでした。学校側からも教務データは内部的に扱いたいが、会計はASPにしたいというニーズがあり、これらを解決する方法を探すうちに出会ったのがSSDSです。機能的には成熟した製品でもあるため、アピール力のある次の一手としてクラウドが魅力だったという理由もあります」と中村氏は振り返る。

当初はGoogleやAmazonでの試算を行っていたが、タイミングよく登場したのがSSDS(SQL Server Data Services)だった。

「テスト中のサービスであるため、私たちもテストを無料で行えます。また、我々のリクエストを受け入れて開発に反映してもらえる可能性が高いのはマイクロソフトだとも感じました」と、中村氏はマイクロソフトのクラウドを選択した理由を明かした。

学校法人向けのクラウド展開予想図

グレープシティではマイクロソフトのクラウド・コンピューティング評価(POC)のフェーズ1として、2008年5月から10月にかけてはSSDSでの動作確認と性能評価を行った。月額使用料管理システム(FP Management)をSSDS上で動作させ、課題を確認することを目的にした性能評価では、SSDSが初期バージョンであったためデータ登録に非常に時間がかかったという性能面の問題はあったが、動作上の問題がないことが確認された。

フェーズ1のテスト環境

「256ユーザー、12万レコードの登録に34時間かかってしまいました。また、データ構造がリレーショナルな構造を利用できないため、検証用に非リレーショナル構造に再設計する必要がありました。しかし、動作的な問題はありませんでした」と中村氏。

月額使用料管理システム(FP Management)

フェーズ1を踏まえ、フェーズ2ではAzureでの動作確認、性能対策およびセキュリティ対策を目的とした評価が行われている。クラウド・コンピューティングにおける課題の対応策を見出すために、「PhotoBord」が移植されている。 「現在Cache機構を構築するのと並行して、Cache効果を引き出すためのSOAPアーキテクチャのアプリケーションをRESTアーキテクチャスタイルに沿っての見直しを検討中です。また、データ保全のための暗号化をPKI認証を使って行おうとしています」と中村氏は語る。

「PhotoBord」

大手学校法人の場合、系列校が点在しているためデータを暗号化して伝送する必要があるのだという。「キーの交換をどうするのかがポイントなのと、全データを暗号化すると時間がかかるのでそれをどうするかが問題になります」(中村氏)

Azureでの検証は2009年いっぱいが予定されている。その後、SSDSへの実装を行うかどうかについては現在は検討段階だ。 「まだ、リリース時期がわからないこともあり、他ベンダーの評価状況にも注目しながら検討しています。現在のテスト環境は海外にあるため、性能面の評価は難しいのですが、機能的な部分の評価を進めている状態です」と中村氏は語った。