さまざまな通信技術の研究・開発の内容を展示したKDDI研究所ブース

パシフィコ横浜で12日と13日の2日間にわたって開催された、無線通信技術・研究開発の専門展示会「ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2009」。同展示会でKDDI研究所は、LTE(Long Term Evolution)システムシミュレータやマルチサイトMIMO、ヘテロジニアス無線ネットワークなどを紹介した。

会場では、無線、TCP、アプリケーションまでを考慮しLTEシステム全体の模擬シミュレーションをPC上で実施できる「LTEシステムシミュレータ」を展示していた。このシミュレータでは、セル内に複数の端末を配置し、セル間の移動や送信電力などがモニターできるという。

LTEシステムシュミレータの展示スペース

19セルモデルのシミュレーションをモニター上で表示

LTEの基本機能のみでなくMIMO(Multiple Input Multiple Output)、ICIC(Inter-Cell Interference Coordination)、ユーザー(端末)ごとにトラフィックを発生させTCP(Transmission Control Protocol)などの機能を模擬させることが可能となっており、さまざまな状況下での性能評価が可能だという。

また、マルチサイトMIMOシステムの展示スペースでは、複数の基地局が連携してMIMO伝送を行いセル境界の精度を向上するシステムの実験機材などを紹介。KDDI研究所では、実際に送受信局を用意し、実験を行い研究開発しているという。

マルチサイトMIMOシステムの展示スペース。画像下は送信装置

実験で利用された送信用アンテナ

マルチサイトMIMOは、基地局から離れるほどシングルMIMOより安定した伝送が可能だが、基地局に近付くにつれシングルMIMOに優位性あるとの実験結果が得られたという。今後はシングルMIMOとマルチサイトMIMOを制御し、更に伝送効率を高めていくとしている。

ヘテロジニアス無線ネットワークの展示スペースでは、LTE / WiMAX / Wi-Fiの異なる無線方式を制御し、効率的な無線ネットワークを構築する技術を紹介。ヘテロジニアス無線ネットワークは、異なる無線方式を同列に制御し、上り下りで個別制御を行うことで、電波の利用効率、トラフィックの抑制が可能。制御する指標が「電波の強さ」「伝送速度」「空き容量」など複数あるため指標の決め方をどう解決していくかが課題だという。

ヘテロジニアス無線ネットワークの概要。異なる無線方式を制御するネットワークシステム。上りはWiMAX、下りはWi-Fiといった具合に、上下非対称の独立制御も行えるという

展示用システムの構成図。LTE / WiMAX / Wi-Fiに加え制御部の装置がある

ネットワーク装置。左からLTE / WiMAX / Wi-Fiの順に並んでおり、一番右が制御装置となる。LTE / WiMAXの装置は基地局と端末部を有線で接続している。画像右上のモニターにはストリーミングの映像、その隣のモニターはどの無線方式を利用しているのかを表示している。画像ではWiMAXで通信中ということになり、制御装置の指標により随時切り替わる。無線方式が切り替わっても映像への影響が少ない

このほか、人体ファントムを利用した携帯端末の性能測定の紹介も行われていた。携帯電話から放射されている電波に人体がどのような影響を与えているかを電力の積分値を指標として評価できる装置・システムを展示していた。

人体ファントムを用いた携帯端末性能測定の紹介ボード。軽量人体ファントムを用いることで3D測定が可能になった

人体ファントムの展示。材質が異なるが、画像左のファントムが軽量化されたものになる

3D測定データ。赤い球体は携帯電話から放射されている電波を全方向で表示しており、左は携帯電話のみ、右は人体ファントムを用いた場合のデータ。ファントム頭部に携帯電話を設置し、設置された部分に"くぼみ"が生じている

(2106bpm/K-MAX)