高級コンパクトの異端児、シグマ「DP1」の姉妹機「DP2」が登場した。APS-Cサイズのイメージセンサーという特徴を受け継ぎつつ、41mm相当の単焦点レンズを搭載。かねてからニーズの多かった標準画角モデルが、ついに現実のものとなった。高級コンパクトは広角モデルが主流だったので、カメラファンにとって文字通り「待望の1台」である。実機による作例を交えながら、その実力を見ていこう。
「DP1」が16.6mm F4レンズ(35mmフィルム換算28mm相当)を採用していたのに対し、「DP2」は24.2mm F2.8レンズ(35mmフィルム換算41mm相当)を搭載する。標準画角で撮れることに加え、開放F2.8と明るいレンズだから、リッチなボケ味も楽しめるのが特徴だ。描写については後述するが、やはり41mm相当という画角がカメラファンには魅力だろう。40mmレンズは通好みな画角として知られている。基本的には標準画角という位置づけだが、撮り方によっては広角っぽくも写り、1本で2度おいしいレンズなのだ。シグマ DPシリーズはベテランカメラファンを意識したモデルだけあって、いぶし銀のチョイスが心をくすぐる。
イメージセンサーは「DP1」と同様、20.7mm×13.8mmの1400万画素(2652×1768ドット×3層)FOVEON X3センサーを採用している。このセンサーはデジタル一眼レフのAPS-Cサイズに相当し、コンパクト機では異例の大きさだ。RGB各色をそれぞれ独立した層で取り込むため、原理的に偽色が発生しない。ローパスフィルターが必要なく、受光した情報をダイレクトにデジタル化できるのがアドバンテージだ。同センサーの高画質ぶりは「DP1」や「SD14」で周知のことと思われるが、特に階調表現とシャープさは突出している。また、「DP2」の画像処理エンジンは新開発の「TRUE II」を搭載している。
外観は「DP1」のデザインをそのまま踏襲しており、質感も含めて大きな変更はない。レンズ筒がいくぶん厚みを増しているが、「DP1」と同様、コンパクトボディでデジタル一眼レフクラスの高画質を達成している。
標準域41mm相当の単焦点レンズを搭載。「DP1」のコーディングは赤系だったが、「DP1」は黄緑に変わっている |
左が「DP2」で右が「DP1」。モードダイヤルに「SETUP」が加わった一方、オートモードを省略している |
操作性の不満を見事に解消
本機は「DP1」の姉妹機だが、異なるのはレンズの焦点距離だけではない。操作性を徹底的にリファインしている。もっとも特長的なのがQSボタンの追加だ。QSボタンを1回押すと、ホワイトバランス、測光モード、ISO、ストロボのアイコンを上下左右に配置。それぞれ対応した十字コントローラを押して、各項目を変更する。QSボタンを2回押すと、画像サイズ、画質、カラーモード、ドライブモードが同様に変更可能だ。「DP1」では操作性の未成熟が課題になっていたが、QSボタンの搭載で問題点を見事にクリアしている。また、「DP1」はMENUボタンとOKボタンが兼用だったが、「DP1」は独立したMENUボタンを装備。MENUボタンでは撮影設定が呼び出せる。一方カメラ設定は、モードダイヤルの「SETUP」で呼び出すスタイルに変更となった。操作体系を整理すると、通常撮影時はQSボタン、高度な撮影設定はMENUボタン、カメラ本体の設定はモードダイヤルの「SETUP」という使い分けになる。
操作性で次に大きな変更点は、上下ボタン(ズームボタン)の役割だ。「DP2」の上下ボタンは、Aモード(絞り優先AE)だと絞り値が、Sモード(シャッタースピード優先AE)ではシャッタースピードが変更可能。撮影パラメータの操作デバイスとして、大きな役目を担っている。こう記すとどうというこのとない機能だが、実はこのズームボタン、「DP1」ではちょっと物議を醸した操作デバイスだった。「DP1」は当初、ズームボタンがデジタルズーム以外に使い道がなかったのだ。ここに不満を抱くユーザーは多く、後日ファームアップによってカスタムファンクションに対応。測光モード、AFフレーム選択、ドライブモードなど、多様な機能が割り当てできるようになった。特にAFフレーム選択は待望の機能だったため、この点を歓迎したユーザーは多かったはずだ。ちなみに「DP2」でAFフレーム選択を行う場合は、十字コントローラの下カーソルで呼び出せる。ユーザーフィードバックの反映を感じさせる点だ。
十字コントローラの左右ボタンは露出補正を担当する。「DP1」が採用していた露出補正ボタンは省略され、ダイレクトに露出補正できるようになった。ここでおもしろいのが、上下ボタンと十字コントローラの左右ボタンの関係だ。「DP2」は両者の機能入替が可能。Aモード(絞り優先AE)を例にとると、上下ボタンに露出補正を、左右ボタンに絞り値変更を割り当てできるのだ。この上下ボタンで露出補正を行うスタイルは、高級コンパクトファンにはおなじみだろう。そう、リコー「GR DIGITAL」シリーズと同じスタイルだ。高級コンパクトというジャンルは「GR DIGITAL」が切り開き、その後「DP1」が追随した。両者のコンセプトはまったく異なるが、通好みのデジタルカメラという点は共通だ。ユーザー層は少なからず重複しているだろう。そう考えたとき、頻度の高い露出補正を共通操作で行えるのは便利だ。
「DP2」の操作性は、まさに刷新という言葉が相応しい。そして「DP1」より確実に使いやすくなっている。ただし、すでに「DP1」を持っていて、「DP2」を買い足すユーザーは悩ましいかもしれない。操作性が激変しているため、2台体制ではおそらく撮影操作で混乱をきたすはずだ。便利になって文句をつけるのはナンセンスだが、それほど「DP2」の操作性はリファインされている。また、新たにマイセッティングの登録に対応。最大3つまで登録でき、登録内容は液晶メニューから呼び出し・切り替えが行える。
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