「緊急シンポジウム レバレッジ規制でどうなる? FX業界」が1日、GCIキャピタルが運営する情報配信サイト「Klug(クルーク)」にて行われた。なお放映された模様は、こちらのサイトにて動画を閲覧することができる。

4月24日、日本経済新聞で「金融庁が投機的取引を抑制するため、レバレッジの上限を20~30倍前後とする方向で調整する」との報道が突如流れ、FX業界を中心に波紋が広がっている。こうした状況を受け、ダイヤモンド・ザイ編集部の浜辺雅士編集長、グローバルインフォの樋山太一氏、GCIキャピタル シニアアナリストの山岡和雅氏をパネリストに迎え、投資家300名を対象としたWEB上討論会が開かれることとなった。

4月24日時点の日本経済新聞による報道で、証券取引等監視委員会の建議や金融庁のパブリックコメントでレバレッジ規制の具体的数字が挙げられていないことについてパネリストからは疑問の声が挙がった。浜辺氏は「広く議論をすべきなのに、公的に発表されず、リーク記事で突如謎の数字が出たという印象。公が突然発表をして、大きな抵抗にあう前に事前にリークしたほうがいいという、当局の判断か」とし、樋山氏は「以前の信託保全の報道の時と同じで、感想としてはまたか、といったところ。今回もうまく乗せられているのかなという気がしてならない。尚早に判断をすることは混乱を招くだけ」と述べた。

レバレッジの規制報道について事前に実施された簡易アンケートの結果(4月25日~30日)によると、87.9%が反対に票を投じた。パネリストからも、レバレッジ規制についてはある程度必要としながらも、20~30倍という数字については反対意見が続出した。樋山氏は「上限を設けることには賛成。ここ最近、700倍近いレバレッジをかけられる会社も出てきた。このまま青天井で行くと1,000倍や何千倍という業者も出てくる。ここまでくると明らかな投機だと感じるが、では果たして20倍が投資で200倍が投機なのかというとそこの根拠は何なのか疑問に感じる。昨年のリーマン・ショックのとき、各社に聞いたところ、20~30倍でされていた方の方が損失大きいという話を聞いていた。むしろ、ロスカットに早くひっかかるので100倍の方が損失は少ない。20倍~30倍にレバレッジを規制することが投資家保護かというとそうでもないのではないか」と語った。また、山岡氏も「僕自身、投機は悪いことと考えていないし、投資も投機も自己責任が基本だと思う。ハイレバレッジのほうが損失少ないのは本当で、個人投資家はストップロスおかずに強制ロスカットくらった所が自分のストップだと思われている方が多い。そういうやり方ならこうレバレッジのほうがすぐにひっかかるのでいい。ただ、レバレッジが高くなりすぎると、その損失を業者がこうむり、飛ぶこともある。(こうしたリスクを回避するために、ある程度の上限は必要だが)20~30倍という数字はその論点とは異なる」とした。

では、実際レバレッジの数字はどれぐらいがいいかという質問に、樋山氏は「FX業者の声を聞いて、最も多いのが100倍。そして、個人的には資産や知識など条件を決めて200倍」とし、山岡氏は「クリック365がレバレッジを100倍に広げた直後なので、100倍が一番いい基準なのかなと思っています」と述べた。

金融庁のパブリックコメントでは、レバレッジの具体的数字は挙げられなかったが、FX取引の区分管理の方法を金銭信託に一本化することや、金融商品取引業者にFX取引にかかるロスカットルールの整備・遵守を義務付けることなどが載せられていたことについて、好意的な異見が寄せられた。山岡氏は「基本やるべき。金銭信託は業者が飛んだとき非常に有効だ。そのためにも、信託保全の方向性をきちっとつめるべきだ。規制自体は世界的流れであるし、何らかの形で規制は必要」、樋山氏は「今回のパブコメについてはびっくりした。それは、もっとキツイという噂を聞いていたので、逆にこれぐらいだったんだ、これぐらいならできるよね、という声だった。業界と対話をした結果が意外に出ているといった印象」、浜辺氏は「真面目な会社は真面目だけど、ひどいところはひどい。カバーのとり方、ロスカットのルールがあまりに業者任せ。また、何もやっていない会社ときちんとやっている会社がわかりにくい。ここはきっちり監督しないといけない」と語った。

今後、FX業者の淘汰進むのではないかという読者からの質問に対し、樋山氏は「これに関して、何社かヒアリングしたが、20~30倍の規制が入った場合、中には手数料制に戻さなければならないという業者もあった。また、業者でかなり撤退を余儀なくされる会社も相当多いだろう」とした。また。山岡氏は「ある程度の淘汰は起こるがあまり見たくはない。自由競争のほうが個人投資家にとっていいことが起こりやすい。競争阻害されるとコストが上がる」とした。