日本の機関もそれぞれに素早い対応、情報の一元化が望まれる
同サイトは現在、英語版によるもののみ、また、「Japan」で同サイト内を検索してみたが、日本に関しての情報は特に出てこなかった。
日本国内では、各自治体による対策本部の設置や住民に対する相談窓口を開設するなどの動きが広がってきている。香川県では、情報提供を目的にしたホームページの開設も行なっている。しかし、それぞれの情報へは各個人がネット上で検索したり、ニュースサイトからの情報源を参考にしたりして、たどり着くしか方法がない。
また、保健所に相談・届け出るようにと報道されているが、どこにどういった情報を相談したらよいか、検索するだけではわからない。例えば、東京都・豊島区の保健所を検索しても専門の相談窓口がトップに引っかかるわけではない。だが、豊島区公式のトップページに行くと、「区民の皆様には、正しい情報に基づいた冷静な対応をお願いします。新型インフルエンザについて(4月30日現在)」とあり、東京都や同区の発熱相談センターの電話番号や保健所の連絡先、新型インフルエンザ対策などがまとまって掲載されている。このように、素早い対策がなされていても、その情報を通達する手段が限られていて、ネットを使う側の検索術や情報を扱うリテラシーに委ねられている状態だ。
空港等での水際作戦も、その取り組みについて盛んに報道されているが、かえって不安を煽るような内容も多い。筆者は、たまたま、空港での対応が強化された4月28日に帰国し、成田入管でアンケートを記入したのだが、この時点では、新型インフルエンザの重要性などもわかっていなかったため、ただ面倒だなという気持ちと、実際に軽い咳が出ている場合などでも旅慣れた人の中には、入国に時間が掛かると手間だと思ってチェックしないのではないかななどと思ってしまった。ハワイからの帰国便だったこともあり、米国本土、カナダやメキシコからの便よりも厳しくなかったこともあるが、入管の人たちだけが皆マスクをしているのを見て、別の飛行機からの乗客も一緒になるのだから、不安にさせないためにもこのエリアに入る前に飛行機でマスクを配ってくれればいいのにとも思ってしまった。ちなみに質問の内容は、10日以内にアメリカ、カナダ、メキシコを訪れたか、または、その国の人たちと接したか、10日以内に咳や発熱などの症状があったかの3問で、便名、パスポート番号、住所、電話、氏名を記入するといったものだった。
首相官邸からは「海外における新型インフルエンザの発生に関する政府の対応状況」といった報告がサイトを通じて公開されているが、あくまで政府の取り組みや方針の発表であり、具体的な対応策や事例は掲載されていない。また、TVなどのニュースメディアにしても、「注意を呼び掛けている」に留まり、その後の対応策などについても、報道機関によりまちまちの状況である。「わが国で感染者が発見された場合には、必要な対応を素早く行うことが必要」といった国会議員のコメントを聞いていて、必要な対応とはどんなことなのだろうと思ってしまった。
情報に対する判断力もネット上のモラルも必要とされることではあるが、インターネット・パワー(速報性)は、こういった場合にこそ発揮できるのではないか。ネットのインターネットの「集合知」を使って、日本国内でもwikiのようなシステムをうまく利用することで、これらの情報の一元化に役立てることはできないものだろうか。