Photoshopの未来の姿は?

――これからのツールとしてのPhotoshopの方向性を訊かせてください。例えば、3D機能はさらに強化されていくのでしょうか?

コナー「まず強化こそされましたが、Photoshopが完全な3D機能を搭載することは有り得ません。現時点で追加した機能は多いのですが、これらの進化は慎重にやっていかなければならないと思います。あくまでも、ワークフローの穴を埋めていくことが大切で、これまでのユーザーのニーズに合わせた3D機能を搭載したという事なのです」

――正直な話、日本のユーザーはPhotoshopに限らず、CS4へのアップグレードをまだ控えている慎重な姿勢の方も多いと思います。そういったユーザーにアピールしたい部分はありますか?

コナー「Photoshop CS4には、3D機能など、とにかくクールな新しい機能が盛り込まれています。でも、既存のユーザーが本当に驚くのは、実は小さな機能だと思います。使い易くなったインタフェースなど、小さな部分がさらにCS4では、充実しています。最初は新しい製品への違和感があるかもしれませんが、CS4の中の機能に慣れてしまうとCS3には戻れないと思います」

――確かに、色調補正パネルの使い易さ、トーンを保護して必要な部分だけ焼きこみができる部分、RAWデータの部分編集が可能になるなど、これまでのユーザーにとっても便利な機能が多いです。

コナー「ただ新しい機能を入れるだけでなく、既存の機能としてあるものを強化する、効率化を図るという部分には、特に力を入れました。近代的なアプリケーションを使えば使うほど、より様々なことがクリエイターは実現出来ます。例えば、これまでは独立型のダイアログボックスで操作していた部分も、必要なときにその機能を呼び出すようになり、より流れるようにストレスなく作業出来るようになりました。色調補正時に調整レイヤーを足すことによって、ダイアログボックスにいかなくても流れるように作業出来ます。仕上げまで終える前に、様々な試みが出来るのです。Photoshopに以前からあるシンプルで使い易い機能に関しても、バックグラウンドで使われている技術は洗練されています。例えばCS3にあったブライトネスコントラストの機能にしても、これまでは使いにくいものでしたが、CS4では元のデータのイメージを破壊せずに、微妙な効果が加えられるようになっています」

――CS4に移行したユーザーの声には、どんなものがありますか?

コナー「パフォーマンスに関しては、常に"アプリケーションをもっとスピーディーに"という声が絶えません。この部分に関しては、私達は今後も妥協することはないでしょう。アプリケーションがどんどん巨大化して、機能は多様化していきます。一部のユーザーはそれに圧倒され、自分にとって必要な機能がどこにあるのかわからなくなっているというケースもあります。アプリケーションをさらにわかり易くまとめていく必要を感じでいます。つまり特定のタスクに対して、使用頻度の高いツールを特定のワークスペースに用意するというような配慮です。CS4に関して、まだまだこの部分では改善の余地があると思います」

――Photoshop CS4に限らず、ツールの機能の強化・変化は、データを取得するカメラ側の変化にも大きく左右されると思うのですが、この両者の関係に関するコナーさんのお考えを聞かせてください。

コナー「確かに、撮影する、つまりデータを取得するカメラ側が大きく変わってきているので、データを加工するツール側で出来る事、やらなければならない事も、今後さらに増えていくと思います。今後、カメラ、センサー側の情報をそのままアプリケーションに流すことが出来たら、面白い事が出来るのではないかと思っています。センサーカメラの撮影時に所得したメタデータを使い、撮影後に出来ることも増えてくると思います」

アドビではデジタルイメージに関して様々な研究が進んでいる。これらの技術が未来のPhotoshopに反映される日も近いかも知れない

撮影:岩松喜平