2009年4月20日から28日まで開催される第13回上海モーターショー。アジアでプレゼンスを高めつつあるモーターショーは、間違いなく中国。北京と上海で交互開催されるモーターショーは、世界からの注目度が高まっている。
世界的な不況の中で異彩を放っている中国。成長率が落ちたといってもプラス成長に変わりはない。それも上海といえば中国の中でも富裕層が多く住むエリアで、来年には万博を控えてビルや道路建設が急ピッチで進んでいる。上海には世界不況というニュースとは無縁のように見える。活力がみなぎる上海に比べると北米市場は急速な経済の回復が見込めない。そためポルシェはアジア市場を最重視している。その証拠が新型「パナメーラ」を世界初公開する地に上海を選んだわけだ。
今回、上海を訪れてそれを確信した。中国では高級4ドアセダンが最も好まれる。ステータスの象徴であり、成功者の証でもあるわけだ。ポルシェの主力は言うまでもなく911。2ドアクーペやオープンボディのラインアップを持つが、どれも2ドアの2プラス2だ。4ドアを選ぶとなると高級SUVのカイエンしか選択肢がない。実際上海で3日間、取材移動中に見たポルシェはほとんどがカイエンだった。イエローボディの911を見たが、たった1台だけ。実際には911も相当数中国で販売されているが、爆発的に保有台数が増加している中国では911の存在も希薄だ。
世界の中でも数少ない成長市場。それも高級車が売れる中国をポルシェが見逃すわけがない。そのためパナメーラのお披露目会場を中国としたわけだ。それにはきっとポルシェがマーケット調査をしたデータが反映されているに違いない。中国人は"メンツ"を大切にする。中国で世界初披露されたとなれば、パナメーラに好感を持つことは間違いない。とくに購買の中心になる富裕層の多くは、こうしたことに敏感なようだ。
会期は意外に短く20日から28日の8日間。一般公開は22日からだから、たった1週間しか見られないことになる。今後はきっと会期を延長することになるだろう |
入口近くには大きな日産の広告が出ていた。マイナーチェンジしたシルフィとXトレイルをアピール。日産の力の入れようがよくわかる |
久々に殺気立ったパナメーラのアンベール
ポルシェのプレスカンファレンスは、20日の11時30分(現地時間)からだったが開始20分ほど前にはブースを埋め尽くすほどのプレスの数。ようやく場所を確保しても前に前に割り込んでくる。こうしたショーでは早く場所を確保した人のカメラ前に立たないのがマナーだが、そんなことはおかまいなしだ。プレスカンファレンスが終了して自由にクルマを撮影できるようになった途端、走り込むようにパナメーラを取り囲む。これにはポルシェの関係者もびっくりしたようで苦笑いを浮かべていたのが印象的だった。
取材の混乱が一区切りついてからクルマをチェックしたが、パナメーラのリヤシートは結構快適。4シーターと言っても生粋のスポーツカーだからと思っていたが、足元はもちろん頭上高も確保されていて適度なタイト感がむしろスポーツカーらしい。ホールド性のいいシートのおかげで、後席でもスポーティ感を楽しめそうだ。
それとラゲッジルームの広さも印象的。928以来のFRスポーツで、ポルシェ初の4ドアスポーツモデル(カイエンはSUV)に与えられた任務は、実用性も重視するユーザーを取り込むことだ。モーターショーの会場に置かれた3台のパナメーラのうち2台には、わざわざ大型のスーツケースを積み込んでディスプレイ。それも横置きにしたスーツケースを2つ積んだものと、縦にして4つ積んだものを見せていた。それほどポルシェが荷物の積載性にこだわったわけだ。とくに4つのスーツケースというのがポイントで、4人乗車して4人分の荷物を積んで旅行に出かけられる。911もなんとか4人が乗れるが、スーツケース4つをあの小さなラゲッジルーム積むのは無理だ。
高級スポーツカーで4ドアとなれば中国の富裕層は黙って見ていない。カイエンも売れているが、中国人の誰もが高級と認めるのはやはりパナメーラだろう。セダンでなくても4ドアで押し出し感と高級感、ブランドバリューがあれば中国で売れるはずだ。中国、中東エリア、北米で売れる、こうしたクルマを企画した、ポルシェのマーケットリサーチ力はなかなかのものだ。
ポルシェがパナメーラのワールドプレミアに選んだのが上海モーターショー。中国市場を強く意識した結果だ。ステージには3台のパナメーラが並べられ、ベールが掛けられている。これからアンベールされる |
プレスカンファレンスが始まる前に会場はすでにプレスでいっぱい。もっと振り向いて写真を撮ろうとしたがこれが限界 |
姿を見せたパナメーラ。すでに写真は先行公開されていたが、実車は写真より美しくスポーティだ |
ポルシェは日本のファンを忘れてはいなかった
アジアエリアで最もパナメーラの販売台数が多いのは中国と予想できるが、ポルシェは日本のファンも忘れてはいないようだ。ポルシェジャパンはすでに日本での受注を開始していて、上海モーターショーに置かれた3グレードと同じ展開になる。パナメーラSは4806ccのV型8気筒エンジンを搭載。最高出力(EEC):294kW(400PS)/ 6500rpmというスペック。車両本体価格は7速PDKで1374万円。4WDモデルであるパナメーラ4S(S4ではない)はSと同じ自然吸気エンジンを搭載し、出力も同じスペック。ミッションも7速PDKで同じで、価格は62万円高の1436万円。トップグレードのターボは、同じV8エンジンにツインターボを装着し、最高出力(EEC):368kW(500PS)/ 6000rpmの大台に乗せている。価格はやはり跳ね上がり、7速PDKで2061万円。
パナメーラのワールドプレミアは上海だったが、車両のリリースはヨーロッパとほぼ同時に日本でもリリースされるようだ。その時期は9月ごろのようで、中国は来年にリリースを予定している。
次は上海モーターショーの傾向と話題のコピーモデルについてお伝えする。