Near Field Communication (NFC : 近距離無線通信)のリサーチ・プロジェクト「Touch」が、iPhoneを使ったRFIDソリューションのプロトタイプの実動デモ・ビデオを公開した。

RFID(Radio Frequency IDentification)は、耐環境性に優れた小型タグに記録したデータを、無線経由でリーダーとやり取りする技術だ。人やモノを管理する仕組みとして、非接触ICカード、バーコードに変わる商品識別手段などに採用されている。また実世界のオブジェクトとデジタルの世界を結びつける手段としても注目されており、Touchのプロトタイプは、この可能性を追求したものである。

デモは、机の上に並ぶRFIDタグを埋め込んだ人形や積み木などに、Dockコネクタ経由でRFIDリーダーを接続したiPhoneを近づけるという内容。例えばムーミンの人形に近づけると、対応するムーミンのビデオがiPhone上で自動的に再生される。エンパイアステートビルの模型に近づけるとCSI New York、家の積み木ではホームビデオが再生という具合だ。

RFIDが埋め込まれた人形や積み木と、タグ情報を読み込み中のiPhone

iPhoneを利用するメリットとして、デモを公開したTimo氏は、デジタル・メディアを楽しむための機能にフォーカスしたデバイスである点を挙げている。RFIDをサポートする既存の携帯電話に比べると、iPhoneは大きなディスプレイを備えており、「メディアのためのレンズとして機能する」。実際のオブジェクトが引き金になるという"遊び感覚(RFID)"と"メディア消費(iPhone)"は、ユーザーに新たなメディア利用体験をもたらす組み合わせだとしている。

このタイミングでiPhoneを取り上げたのは、iPhone OS 3.0への期待もあるようだ。「Appleの特許から推測すれば、(Appleが)iPhoneでのRFIDテクノロジの利用を考えているように思える。またiPhone SDK 3.0では、iPhoneソフトウエアから外部ハードウエア・アクセサリへのアクセスが追加され、サードパーティによる(iPhone対応)RFIDまたはNFCリーダーが可能になる」と指摘している。Appleの特許の具体的な内容には言及していないが、おそらく無線コミュニケーション・インタフェースを通じたリモートオーダーの処理システムなどを指しているのだろう。

プロトタイプにおけるiPhoneの役割はデジタルメディア再生だが、可能性はアウトプットだけではないとも指摘している。カメラや入力機能を備えたiPhoneを使って、逆にオブジェクトに対してインプットするというシナリオだ。

様々な形での結びつきを繰り返しながら、時間をとともにフィジカル・オブジェクトとデジタル・オブジェクトが融合していく。「"モノのインターネット"または"Spimes"(※)がメディアの世界に適用されるというアイディアを具体的に示すのがデモの狙い」と、Timo氏は説明している。

※:Spimes
Spime(s)。SF小説家ブルース・スターリングが著書「Shaping Things(Mediawork Pamphlet)」で挙げた造語。RFタグ/ICタグやGPSユニットなどが付与され、使用履歴・位置の検索などが可能となっているデバイス(物体)を指す。