シマンテックは、第2回ノートン・オンライン生活レポート2009を発表した。この調査は、2008年10月13日から12月5日の間に、月に1時間以上インターネットを使用している18 歳以上の大人6,427人(8~17歳の子供を持つ親1,297人を含む)と8~17歳の子供2,614人を対象として、12カ国(米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、中国、日本、インド、オーストラリア、ブラジル)において、インターネット上で行われた。調査結果の詳細に関しては以下を参照してほしい。

・ノートン・オンライン生活レポート2009/詳細データ
・ウェブキャスト(日本語訳付き)

非常に興味深い結果が報告されている。実際の質問には、次のようなものがあった。()内は、回答の平均値、もしくは最多値である。

大人への質問

  • インターネット上で友人を作ったことがありますか?(58%)
  • インターネット上に何人の友人を持っていますか?(41人)
  • インターネット上の友人のうち、何人に実際にあったことがありますか?(74%)
  • インターネットによって長く連絡をとっていなかった友人と再会したことがある(56%)
  • インターネットを通じてかつての恋人関係を再燃させたことがある(14%)
  • インターネット上で秘密や個人的なことを共有することがある(24%)
  • インターネットは私の対人関係を改善させた(68%)
  • インターネットは全体的にいって家族との対人関係を改善させた(45%)
  • SNSにプロファイルを持っていますか(49%)
  • インターネットを介して家族や友人と話す際にWebカメラを使用していますか(42%)
  • Twitterのようなサービスを利用していますか?(24%)

子供と大人(もしくは親)への質問

  • [子供]月に何時間インターネットを利用していますか(39時間)
  • [大人]子供は月に何時間インターネットを利用していると思いますか(21時間)
  • [大人]子供のインターネットの利用に関してもっともよく表しているのはどれですが(利用時間が長すぎる:62%)
  • [子供]子供のインターネットの利用は、時間の無駄使いだと思いますか(はい:38%)
  • [大人]子供のインターネットの利用は、時間の無駄使いだと思いますか(はい:51%)
  • [親]インターネット上で自分が許可していない何らかの行動を子供が行っているのを発見してことがある(22%)
  • [親]オンラインで子供たちを保護するのは主に誰の責任だと思いますか(親:90%)
  • [親]オンラインで安全は習慣を行うよう子供に話したことがありますか(70%)
  • [親]あなたの子供は、友人の家でインターネットを使っていますか(22%)
  • [親]家庭用のコンピュータに保護者機能を設定したことがありますか(33%)

セキュリティに関する質問

  • [大人]インターネットを使用する際に個人情報の安全を守る方法を知っている(84%)
  • [大人]インターネットで信頼できないサイトを訪れたことがある(46%)
  • [大人]ファイルのバックアップをしてない(55%)
  • [大人]個人情報の安全に自信をもっていない(29%)
  • [大人]安全でないパスワードを使用している(45%)
  • [大人]セキュリティソフトを持っていない(22%)
  • [大人]誰かが遠隔操作で自分のPCに侵入したことがある(27%)
  • [大人]頻繁にウイルススキャンを実行している(79%)

新たなセグメント、E-Family

調査結果によれば、10人中約7人の大人は、インターネットは人間関係の改善に役立っていると回答している。そして、さらにはよりよい家族関係、友情、恋愛につながると認識している。友人や家族のコミュニケーションにはメールを使い、家族が離散した状況でも、WebカメラやSNSを使いコミュニケーションを常時取り続けている。さらにはTwitterなども使われている。

このように、家族の人間関係にもインターネットが役立っていると考える層で、ユニークなセグメントが存在する。「E-Family」と呼ばれるものだ。次のような特徴がある。

  • 1週間あたりのインターネット利用時間が多い
  • SNSの利用が多い
  • オンラインの友人が多い
  • PCに関する知識が豊富
  • 新しい技術への志向が強い
  • 多くの子供が家族のインターネットルールに従う

固い繋がりを持つE-Familyは、インド、中国、ブラジルなどの新興国で顕著とのことである。

脅威に対する意識

99%もの大人のオンラインユーザーが個人情報保護のための対策をとっていると答えているにもかかわらず、約半数は知りつつも信頼性のないWebサイトを訪れ、データをバックアップせず、安全でないパスワードを使い回している実態も報告された。さらに10人に2人は、セキュリティ対策ソフトをインストールしていないという事実もあった。セキュリティ対策の必要性を認識しているが、多くのユーザーがあまりウイルススキャンを実施しておらず、現在の脅威に対して適切かつ十分な保護を行っていない。これには、総合的なセキュリティ対策ソフトなどが、効果的と考えられる。しかし、10人中9人の大人および子供のユーザーが、インターネットの持つ利点はそのリスクにも勝ると考えている。

日本のオンラインユーザーの特徴

オンラインでの人間関係の構築や改善傾向が世界では進んでいる中、日本の大人に関しては、消極的な姿が浮かび上がる。さらに、ファイルのバックアップを行っていない割合が最も高く(66%)、ウイルススキャンの頻度も最も低い(52%)など、セキュリティ意識の希薄さも露呈している。

レポートを発表するシマンテックリージョナルプロダクトマーケティングシニアマネージャ、風間彩氏

そして、最も深刻に思えたのは、日本の親は、子供のオンライン利用の際の保護については、子供自身に責任を課す傾向が12カ国中最も強く(40%)、一方で、これは親の責任であると答えた割合も最が低い(79%)。世界平均では、子供の責任とするが19%、親の責任が90%となっている。世界的には、親がオンラインで子供たちを守る責任を自覚している。さらに、一部の子供は、世代間の扉を開き、オンラインでの世代間格差を縮めようとしている。25%の子供はオンラインで親と「友達」になっており、10%の子供は祖父母とのコミュニケーションにインスタント・メッセンジャーやSNS、電子メールや携帯メールなどを利用している。

日本では、子供のオンラインで行動を把握しきれていない。さらに世界的にはオンラインを利用した対話も進んでいるが、日本ではそのベースとなる安全なオンラインの利用に関する対話も少ない。シマンテックの風間彩氏は、日本の文化的風土も背景にあるのではないか?と推察する。

日本におけるオンライン利用の実態について

財団法人インターネット協会主幹研究員、大久保貴世氏

発表では、同時に財団法人インターネット協会、主幹研究員である大久保貴世氏からも、現状の日本(特に子供)のトラブル事例などが報告された。日本では、子供のオンライン利用では携帯電話が非常に大きな割合となっている(今回のシマンテックの調査には携帯電話の利用は含まれていない)。そして、トラブルでも大人と子供では大きな差がある。

大人の場合:現実トラブル→ネットへ
子供の場合:ネットトラブル→現実世界へ

大人の事例では、やっと別れた元カレにブログで再会してしまうといったことがある。子供の場合には、プロフで知り合った男性に制服を譲り、それが原因でトラブルが露呈するといった事例もある。

インターネット協会へ寄せられた相談結果から、日本における親自身の意識の低さについては、PCやネット一般についての理解の不足があると指摘している。掲示板の書き込みを削除するには、どうすればよいのか?といったレベルを含め、ややもすると知識不足からどう対処してよいかがわからないまま放置するといった姿も浮かびあがる。

また、この大人と子供の別れ目であるが、大久保氏は高校1年生くらいとしている。実際の調査や相談結果から得られたとのことである。日本では、小中学生以下のネットトラブルには、十分に注意をすべきということであろう。

シマンテックからの提言に、積極的に子供たちのオンライン生活に参加すべしという点があった。子供のオンライン生活がどのようなものか?その姿を見て、理解することが重要であろう。そして、一層の親子の対話が求められると、改めて感じた次第である。