念入りな検査を経て出荷されるオシアナス

生産工程の緻密さもさることながら、驚いたのが繰り返して行われる検査。たとえばムーブメントの組み立てでは、部品を載せるとき、エアーを使ってきちんと部品を掴んだかどうか、載せたあとも確実に載ったかどうかをチェックする。さらにある程度部品が組み上がったら、正確な位置に部品が入っているかどうかカメラで検査する。カメラによる検査はラインの上でトータル3回行われ、それをパスするとフタをかぶせてネジ止めされる。

廊下にずらりと並ぶ賞状。金型から部品、製品までの自己完結型生産には、熟練工、多能工の育成が欠かせない。社内で技能検定の受験をすすめているのもその一貫という

またでき上がったムーブメントに針打ちを行ってモジュールの形にした後も、カメラを使って正確に取り付けられているかどうかを自動でチェックしている。製品構造上、針の正確な取り付けがポイントとなっているが、この針打ちのための針圧入機も独自開発を行っており、針打ちしたものを画像で検査を行って見極めながら、ひとつひとつ確かな品質のものにしていくのだという。さらにマルチバンド6という特長を持っているので、それを支えるアナログ回路、アンテナ回路系の部分の組み立ての確実さも求められる。

次にモジュールをケースに入れ、製品状態になった段階でも、それぞれの針や文字盤の組み合わせなどを、文字盤を拡大表示し確認している。さらに、オシアナスでは外装品の組み合わせにいろいろなバリエーションがあるので、外観が間違いなく行われていうかどうか自動判定を行い、人間のミスを防ぐため2段構えで検査している。また、最終的に製品にしたものをそのまま出荷するのではなく、高温、低温、常温のエージングを1週間かけて行っている。続いて1台1台水没させ、製品の仕様に合わせて5~20気圧を加えて検査、その後に水没させたものを暖め、ガラスに曇りが出ないかどうかを確かめる気密検査など、念入りな検証を通過した"選び抜かれた"オシアナスだけが出荷されるのだ。

針打ちのあと、時字などとの位置が正確に合っているかどうかを検査する

水没させたオシアナスに5~20気圧を加えて防水性能をみる

オシアナスの生産現場を見て感じたのは、それぞれの事象を数値化することで可視化し、解明していくという考え方をベースに生産技術を高め、さらに熟練した人間の技も交えながら、高品質な製品を驚くほど効率的につくろうとする一貫した姿勢だ。そうして蓄積されたノウハウ、技術が、いままで誰も考えたこともないような新しい技術を搭載したソーラー電波ウオッチを生み出していくのだろう。

「G-SHOCK」と山形カシオ

G-SHOCKの最上位モデル「MR-G」の生産も行う山形カシオ。オシアナスと同じく高度な技術を必要とするMR-Gでは熟練した作業者2名のみが最終工程を担当する権限を与えられている。ここでは、ほんのわずかな部品同士の誤差さえも手作業でひとつひとつ調整して合わせていく。こうすることで針の精度はさらに高まるのだ。現在、月産は200本程度だという