デザインが担う要素

デザインが担う大切な要素とは、「テクノロジー」「ビジネス」「マーケット」を1つにまとめる役割を持ち、さまざまな感覚などをつなげていくことにある。こうした役割を持つが故に企業はデザインに責任を持つ社会的必要性が生じる。この責任とは、「ユーザー」「製品」「テクノロジー」「社会」それぞれに対する責任であり、デザインにより、それを1つのものとして捉えることができるようになる。

デザインの担う要素と社会的責任

また、「ブランド」「テクノロジー」「ユーザー」を1つのつながりとして考えた場合、デザインによりそのブランドが示す約束ごとを証明することになるという。ブランドの見せ方というものは、さまざまな方法、方向性が考えられ、良く見られるのは企業の特長を見せるものであるが、「製品の使い方やメディアへのアピールなどもブランドとして内包することにより、より強いブランドを打ち出すことが可能になる」(同)という。

デザインにより、そのブランドが打ち出すスタイル(イメージなど)を保つことが可能となる

さらに、ブランドは意匠の管理などに限らず、製品のフィーリングも提供していく必要があるという。このフィーリングは、使用時の感触のほか、買い物に行く時の高揚感、ネット上のブログなどでの評価なども含まれ、「デザインは幅広い意思を内包するものであり、当スタジオでは"DS Design & Brand Experience"と呼んで、ただのデザインと区別している」(同)とする。

デザインにかかわるすべてのものを「DS Design & Brand Experience」は含ている

デザインの幅が広がる3次元化

同社のデザインスタジオは、「小規模でもパワフルなチームを作りたかった」とAnne氏が語るように、現在同Webサイトを見る限り11名で構成されている(Anne氏含む)。スタッフ1人1人が専門性を持ち、それが有機的につながることで、新たなデザインを生み出していくことにつながって行く。これを「Design thinking」と同社では呼んでいる。これについて、Anne氏は「デザインを行う際は、創造から始まり、デザインを起こし、シミュレートを行い、実物の製造、製品化という流れとなるが、当社ではシミュレーションや本当のデザインを見せる機能などの提供を行ってきた。これは、これまでのデザインが持っていた枠を取り除き、さらに大きな枠組みにデザインを拡げることができるもの」とする。

同社のツールである「CATIA」を用いて作製されたものの1つとして2008年の北京五輪のメインスタジアムである北京国家体育場(通称:鳥の巣)が挙げられる。「鳥の巣は当社の"CATIA"を用いてデザインされたが、造船で培った鉄工のノウハウやビル建設のノウハウなどをツールにフィードバックして3次元で表現することで複雑なデザインを実現できた」(同)とし、「特に曲面の部分は"CATIA"を用いなければ実現できなかったとの評価を貰っている」とデザインを行う上で同社のツールがいかにデザイナーの考えどおりの構築物を実現させやすいかを強調する。

この3次元化を設計の時点でできることは、「クリエイトの初期段階であるバーチャルの段階でデザイナーが製品を廃棄することまで考えられる」(同)ようになるわけであり、よりエンジニアの領域に踏み込むことができるようになる。ただし、「まだ3次元でデザインしているデザイナーは少ないのが実情」(同)としており、同スタジオでは、「デザイナーが重視するソフトウェアのインタフェースのR&Dやインタラクティブ性の操作などを行うことで、デザイナー向けソフトウェアとして自分(デザイナー)達が使いたいと思えるソフトウェアができるようになる」(同)とするほか、「個人的な意見を言えば、ウィンドゥなどの余分なものをなくして、モノを直接いじれるようにしていきたい」(同)と将来に向けた希望を語る。

「Design thinking」のイメージ図とデザインのエコシステムのイメージ図

ただし、デザイナーの仕事である「Sketch」「Sculpt」「Surface」「Mechanical」が1つの環境で実現できておらず、そうした環境の統一なども含めてよりデザイナーとの親和性が高いソフトウェアに改良していくことを予定しているという。

デザイナーの主な仕事4種類(これが現状、1つの環境だけで行うことができていないという)