厚生労働省はカラーコンタクトレンズの製造業者、販売事業者、輸入業者を対象に、「おしゃれ用カラーコンタクトレンズの薬事法規制に関する説明会」を31日に開催した。様々な調査結果をふまえ、非視力補正用カラーコンタクトレンズの薬事法規制について今後の措置を説明した。
瞳の色をファッション感覚で手軽に変えることができるカラーコンタクトレンズ(以下、カラーコンタクト)が11月から医療機器として薬事法の規制の対象となる。現在のところ、カラーコンタクトは生活雑貨の位置づけで、一般小売事業者やネット通販などで販売されている。しかし、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)が2008年8月に公表した「視力補正を目的としないカラーコンタクトレンズに関する調査結果」によると、カラーコンタクトによる眼障害で眼科を受診する患者の割合は年々増加の一途をたどっているという。
その原因は、「手入れ不良」(25%)、「長時間装用」(10%)、「使用方法を理解していない」(10%)、「装用したまま就寝」(4%)など、使用方法の問題により生じたものである場合が多い。さらに、「品質が悪い」(13%)、「着色剤のはげ落ち・漏出」(4%)といった品質に問題があるケースも見られ、手入れの仕方や装用時間などの使い方に関する理解が不十分であることに加え、製品の品質そのものが眼障害を引き起こす原因となっていることがわかった。
一方、カラーコンタクト使用者のうち、一般の視力補正用のコンタクトレンズそのものを使用したことがないと答えた人の割合は91%にものぼり、99%が事前に眼科医の診断を受けておらず、使用方法の説明を受けたことのない人が約8割、取り扱い説明書を受け取っていない人の割合が3割に達した。
こうした実態を踏まえ、厚生労働省は2008年7月、カラーコンタクトを視力補正用の通常のコンタクトレンズと同様に医療機器に指定し、薬事法の規制対象とする方針を決定。以降、検討部会を設けて準備を進め、2009年2月4日に政令を改正、11月4日の施行後は、カラーコンタクトが従来の「消費生活用製品安全法」ではなく、「薬事法」で正式に規制されることとなった。
先述のNITEの調査によると、現在のカラーコンタクトの入手先は「販売店」、「インターネット・雑誌」がそれぞれ47%を占めていた。だが、11月4日以降、都道府県知事の許可を受け、専門の管理責任者を置いた販売事業者でしかカラーコンタクトは販売できなくなるので、消費者にとっては購入方法が変わることになる。
移行期間は3カ月、"届出済み未承認"商品の特例措置も
ただし、こうした販売方法の変更には移行期間が必要になる。同説明会では、移行にあたっての特例措置が説明された。
11月4日の法施行後、カラーコンタクトの無許可での製造・販売はできなくなる。しかし、施行前からすでに市場に流通しているいわゆる販売店在庫に関しては、施行後3カ月以内は規制の適用外となる。そのため、2010年2月4日までの間は、現在流通しているカラーコンタクトは実質的に従来どおり販売されることになる。
一方、11月4日以降製造・流通する商品については、製造事業者・販売事業者は届け出が必要になる。ただし厚労省では、申請から承認に至るまで手続きに一定の時間を要することから、"届け出済み未承認品"に関しては、施行から1年の製造、1年3カ月までの流通を認める猶予期間を設ける政令を4月中にも告示する予定だという。つまり、2009年11月4日以降は許可を受けた事業者のみがカラーコンタクトの製造・販売ができるが、2011年2月4日までは"届出済み未承認"の商品が市場に出回ることになる。
また、カラーコンタクトの承認品質基準に関しても政令告示後に新たに定められる。基本的には視力補正用ソフトコンタクトレンズと基準を踏襲する方針だが、大きく異なるのは、レンズが目に見える光(可視光線)をどのくらい通すのかを表す"視感透過率"と、コンタクトレンズの素材が酸素をどのくらい通すかを表す"酸素透過係数"の2点。視感透過率に関しては基準値の±5%以内であることに加え、下限値として80%以上が条件とされるほか、酸素透過係数に関しては基準値の±20%以内、かつ着色による酸素透過係数への影響を評価することが必須となる予定だ。つまり、着色により視野を極端に遮るものや色素の多いものに関しては酸素透過に影響がないことの妥当性の説明が必要になるということとなり、今後は安全性が立証されたカラーコンタクトだけが市場に流通されるということになる。消費者はより確かな商品を確かな場所でのみ手に入れることができるというわけだ。
なお現状、コンタクトレンズの購入にあたっては、薬事法上では、医師の処方箋の提出は必須とされていない。カラーコンタクトに関する今回の政令改正は、製品そのものに対する品質規制と製造・販売に関して許可を求める規制であり、これまでどおりネット通販などによる通信販売での購入は可能としている。