「Virtual Preview」というサービスをご存知だろうか。ヘンケルジャパンのシュワルツコフ プロフェッショナル事業本部が先月23日発表した、ヘアサロン向けのコンサルテーションサイトである(機能制限された簡易版も一般公開されている)。同サイトでは顔写真を基にFlashアニメーションを生成し、それに対してさまざまな髪型を合成することができる。
同サイトのポイントは、髪型を合成したFlashアニメーションが顔を傾けたり、表情を変えたりする点。これにより、現実に近い雰囲気で新ヘアスタイルを確認でき、「想像していた髪型と違った」などという"残念な事態"を避けることができるのだが、これができるのも、写真一枚から瞬時にアニメーションを生成する技術と、そのアニメーション上で人物と髪型を一体的に動かす技術が組み込まれているためである。
Virtual Previewの画面。右側の顔イメージは、まばたきしたり表情を変えたりするため、現実に近い雰囲気で新しい髪形を見ることができる。機能制限された簡易版が一般公開されており、だれでも無償で試すことが可能だ |
本誌は、同サイトを技術面から支えている企業「モーションポートレート」の吉森正治氏、佐々木大地氏に話を聞く機会を得たので、以下、その模様をお伝えしよう。
写真から動画を生成、合成/操作も自由
モーションポートレートは、PlayStation 2向けグラフィックエンジンの研究・開発などを行っていたソニー木原研究所のメンバーによって設立された企業だ。同研究所の閉鎖を契機に一部の研究員が独立し、ソネットキャピタルパートナーズの出資によって立ち上げられた。
モーションポートレートが得意とするのは、先に説明したような、顔写真からアニメーションを生成し、そこにさまざまな要素を合成したり、それを操作したりする技術。写真から適度な数の特徴点を抽出し、それらを滑らかに動かすことで実現している。特徴点の数をある程度抑えているためアニメーション生成処理は極めて軽量。通常のCGでは何週間もかかるような映像が瞬時に生成できる。
この技術には、社名と同じ「モーションポートレート」という名称が付けられており、Virtual Previewに限らず、さまざまな企業で活用されている。
例えば、平安閣が運営するWebサイト「Go happy!」では同技術をウェディングドレス選びに役立てている。顔写真をアップロードすると、ウェディングドレスを着たモデルに自分の顔が合成される。静止画ではあるが、拡大縮小が自由に行え、衣装を着用したときの雰囲気を味わうことができる。
また、福井県眼鏡協会の東京ショールームに設置された「MPGlasses」では、モーションポートレートを基に、さまざまなメガネをアニメーション上で試着するサービスを提供中。フレーム、レンズともに豊富な種類が用意されているうえ、レンズの角度や間隔などを微調整することも可能だ。
さらに、アデランスの「ヘアTRY」でも同技術が使われており、Virtual Previewと同様、自分のアニメーションにさまざまな髪型を合わせることができる。トップやサイドのボリューム増減といった微調整にも対応している。
そのほかにも、九州電力がWeb上で行ったボーカルオーディションでは、自分で歌った課題曲に自分の顔を合成したプロモーションビデオを合わせて再生したり、サントリーの「顔バケ」キャンペーンでは偉人の顔と自分の顔を合成するモバイルサイトを提供したりと、短期キャンペーンでも数多く活用されている。ソニーと共に2007年~2008年にかけて行った「REC YOU」キャンペーンではカンヌ広告祭2008で金賞を受賞するという快挙も成し遂げている。
ソニーのキャンペーンのアイデアの元となったデモ。写真から生成したアニメーションが多数並べられている。通常時はそれぞれ異なる動きを見せるが、第九が演奏されると一斉に口を動かし、大合唱を始める |
アーティストのPVや、ゲーム内での会話オペレーション、テレビ番組でのアニメーションなどでも活用されているので、知らぬ間にご覧になっている方も多いはずだ。