デルが2月19日に発表した小型プリンタ「Wasabi」。名称のユニークさもさることながら、バッテリ駆動によるモバイル利用が可能な点や、インク不要の印刷技術「Zinkペーパー」を採用している点でも興味深い製品となっている。
バッテリ駆動も可能なモバイルプリンタ
デルが発売したWasabiは、Zink Technologyの「Zinkペーパー」技術を使用したプリンタだ。Zinkペーパーを採用するプリンタは、すでにポラロイドの「Polaroid PoGo」や、タカラトミーの「xiao」で採用例がある。
CMYの染料結晶が層になってペーパーの側に塗布されており、プリンタヘッドの加熱によって結晶を溶かすことで印刷する仕組みだ。この仕組みはプリンタ側にインクやノズルなどを必要としないことから、プリンタというハードウェアを非常に小型化できる。Wasabiも非常に小型で、本体サイズは122.5×75×24.2mm。重量は225gと、バッグに入れても気にならないレベルだ。
ただし当然のことながら用紙は専用品が必要となる。ZINKペーパーは2×3インチ(約5×7.6cm)で、裏面がシールになっているのが大きなポイント。印刷したものを好きなところに貼って楽しむといった提案は、このサイズの用紙としてはアリな発想だと思う。
ちなみにデルでは用紙の個別販売として、24枚(720円)、48枚(1,230円)、96枚(2,150円)という3パッケージを用意している。インク代は無料なので、1枚あたり22~30円といったところ。インクジェットプリンタでL判の用紙を用いたときに近いぐらいのコストはかかることになるので、96枚パックを買うと22円強で済む計算だが、少々高めと思っておいたほうがいいだろう。
デルの用紙パッケージが12枚の倍数になっているのは、12枚でワンパックになっているからだ。本体側に一度にセットできる用紙枚数も12枚。さらに、本製品はバッテリ駆動にも対応するモバイルプリンタ製品となるが、この公称駆動時間も約12枚に設定されている。バッテリはスペアバッテリも用意され、2,600円で購入可能だ。余裕のあるバッテリ駆動時間とは言えないレベルなので、屋外利用が多いならスペアバッテリは必須だろう。ただし、ACアダプタを接続したままの利用も可能なので、電源が取れるところならばACアダプタを利用しておいたほうが安心できる。
背面カバー内にバッテリパックを備える。バッテリの仕様は7.4V/450mAh。オプションで単品販売もされている |
ACアダプタはモバイルノートPC並みのサイズ。Wasabiのサイズに比べると相対的に大きく感じられる |
本体は若干丸みがあるものの、ほぼ直方体に近い形状である。持ち運びにおいては、突起部分がないのは好ましい。本体の側面にはインタフェースや操作ボタンが並んでいる。インタフェースはACアダプタを接続する電源端子や、PictBridge対応機器とUSB接続するためのUSB端子の二つ。ボタンは電源スイッチと、再印刷ボタンである。再印刷ボタンとは、Wasabiで印刷した"最後の画像"をもう一枚印刷するというもの。つまり、最後に転送された画像データがWasabi内にストックされており、再転送の操作をすることなく増刷(写真風に焼き増しと言うべきか)できるものである。
側面カバー内に、電源端子とUSB端子を備える。USBはPictBridge専用 |
操作ボタン類も一箇所に集まっている。左から電源スイッチ、再印刷ボタン、カバーイジェクトのつまみとなる。右端にある金属部品はストラップフック |
このほか、上面はスケルトンカバーになっており、用紙をセットするさいにはこれを空けて作業することになる(詳しくは後述)。このスケルトンカバーの内部に、各種インジケータが用意されている。正常動作は笑った顔、紙詰まりや用紙切れなどの印刷エラー時には困った顔のインジケータが点灯・点滅することで動作状態を示す。また、バッテリ充電時に点灯するインジケータが用意されるほか、再印刷ボタンを長押しすると三つのインジケータのパターンによって総印刷枚数が分かるという機能も備える。最後の機能はおまけ程度であるが、”笑顔”と”困った顔”という一種のピクトグラムを使うことで、文字を使うことなく情報を伝えようというコンセプトは感じられる。ワールドワイドに展開する製品ゆえの心配りかも知れない。