富士通が、初心者向けパソコンとして発売した「らくらくパソコン」が着実な売れ行きを見せている。
「爆発的な売れ行きはない。だが、着実に一定数量が売れている。購入者からの評判も高い。初心者がパソコンを利用するための敷居を下げるという点で、狙い通りの効果をあげている」と語るのは、富士通パーソナルビジネス本部・三竹兼司本部長代理。
2008年11月から発売した「らくらくパソコン」は、シニアや初心者、さらには一度パソコンを利用したことがあるものの挫折をしてしまった人たちに、もう一度使ってもらえるパソコンを目指して、ハードウェア面から製品企画に取り組んだ製品だ。
らくらくパソコンの最大の特徴はキーボードにある。
3色のキーキャップを用意し、白キーボード搭載モデルの場合、ローマ字入力で使用する英文字部分には白。英文字のうち母音となる「A」「I」「U」「E」「O」と、「っ」などの小さい文字を入力する際に便利な「L」のキートップは青色。そして、数字や記号などの部分はグレーとした。また、[Enter]キーには「確定・改行」、スペースキーには「空白」と、日本語を併記している。
「初心者は、キーボードを見ただけで拒否反応を起こしてしまう。色分けされた部分のキーだけを利用すればいいことがわかれば、キー入力がそれほど大変ではないことがわかる」(三竹本部長代理)。
富士通が、この製品に本気であることは、単に文字を大きくする、メニューを見やすくするといったソフトウェアの改良に留まらず、キーボードの設計や不要と思われるキーを取り払うなど、ハードウェア面から設計し直した姿勢からも伝わってくる。完成した外観は、富士通の売れ筋モデルである「FMV-BIBLO NF」シリーズをベースとしているものの、まったく別の製品という感じにすら受け取れる。
「初心者やシニアは、パソコン終了時にスリープ状態にしたまま、電源コードも抜いて片づけてしまい、データが消失するということもある。らくらくパソコンでは、電源を押せばシャットダウンするという形にしたのも、こうした初心者ならではの問題を回避する狙いから」というように、電源部分の改良にも踏み込んだ本気ぶりだ。
さらに、量販店向けモデルとして、ホワイトとブラックの2色を用意。加えて、日経BP発行の初心者向けパソコン誌「日経PCビギナーズ」の協力を得たコラボレーションモデルとして「FMVらくらくパソコン(日経PCビギナーズコラボモデル)」(プラチナモデル)をラインアップ。同モデルでは、4GBのメモリ搭載や、ノングレア液晶の採用など、付加価値を高めた。
これだけのラインアップを揃えたことも、富士通の本気ぶりを示すものだ。