UXを高めるもう1つの基盤 - Silverlight
UXを実現するテクノロジーとして同社が推しているもう1つの技術がSilverlightだ。
元々、「WPF/E」(EはEverywhereを表す)というコード名で開発されていたSilverlightは、WPFをクロスプラットフォームで使えるようにすることを目標にした技術である。Webブラウザ上で映像やアニメーションなどを再生するための実行環境として配布されており、WindowsやInternet Explorerに限らず、さまざまなOS、ブラウザをサポートしている。「Silverlight for Mobile」と呼ばれるモバイル機器向けのバージョンも開発中だ。
先日ベータ版がリリースされた次期バージョン「Silverlight 3」では、H.264に対応したほか、SilverlightアプリケーションをWebブラウザの外(ロカールPC上)で実行させる機能も搭載。SEO作業の自動化を可能にする「ディープリンキング」といった機能も追加されている。将来的には、GPUアクセラレーションのサポートも計画されており、WPFに近い環境が実現される予定だという。
開発環境に目を向けると、.NET Frameworkを基盤に、豊富なコントロール(UIコンポーネント)と強力なデータ操作/ネットワーク処理機能が提供されているうえ、WPFと同様、Visual StudioとExpressionを使って開発を進められる。Silverlight 3では、グラフィクス・アニメーション機能が強化されることが発表されたうえ、提供されるコントロールも60以上に及ぶ予定。アニメーション対応のデザイン環境であるExpression Blendの大規模機能追加も行われる見込みで、開発効率の向上を強く後押ししている。
プラットフォームを選ばずにリッチなアプリケーションを実行できるSilverlightは、WPFに比べるとビジネスシーンでの利用事例は多い。それでも、そのポテンシャルを考慮すると普及度合いはまだまだこれからと言え、マイクロソフトではUX向けのプラットフォームとして活用してもらうよう、啓蒙活動に力を入れている。
そうした啓蒙活動の一環として、国内事例がいくつか紹介されているので、以下それらの一部をご覧いただこう。
日本デジタルオフィスの「Do!Cat」シリーズ
Silverlightで活用したドキュメントソリューション製品。文書管理/活用のためのサーバ連携ソリューションから、企業内動画作成・配信ツールまで幅広いラインナップをそろえており、開発事例も豊富。
TDKラムダのBIシステム「FSDA Supporting System」
BIシステムの利用率に問題があったTDKラムダでは、Silverlightを使ってフロンエンドを改修。BI固有の用語が露出する難解なインタフェースが改善されたうえ、レポート生成処理速度が向上し、利用率が上がった。
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以上のように、マイクロソフトでは、過去の反省を活かし、WPF、SilverlightをUXを高めるためのプラットフォームとして推進している。UXは売上、コスト、生産性などの問題を解決するうえで大変有効だ。商品ラインナップの拡充、システムリソースの増強といった施策と併せ、経営課題を解決する手段の1つとして頭に入れておいて損はないだろう。