米IBMが米Sun Microsystemsの買収に向けた話し合いを進めていることが、米Wall Street Journal (オンライン版)の3月18日付け(現地時間)の報道で明らかになっている(関連記事)。関係者の話として伝えられた今回の買収交渉だが、その狙いはSunの抱える大手顧客や知名度の獲得とともに、金融危機で先行きが曇りつつあるSun救済にあると言われている。今回は、速報以降の情報をフォローするとともに、買収成立後の両社の製品ラインナップの行方を予測することで、買収の背景について探っていく。

今回の最大のポイントは、Sun救済の意味合いが非常に強い点だ。ドットコム・バブルでピークを迎えたSunの株価は、その後下降の一途をたどり、IBMの買収観測が出る直前はピーク時の50分の1近い水準にまで落ち込んでいる。大規模システムやデータセンター用途で幅広く利用された同社の製品だが、現在ではサーバ市場のシェアでもDellの後塵を拝する業界4位となっている。さらに止めを刺したのが金融危機で、主要顧客らが次々と倒産または合併を伴う事業縮小、投資抑制などに回り、騒動の震源地となった。ここ2四半期は連続で大きな赤字を計上しており、しばらくは情勢回復が見込めないことを考えれば、遠からず財務上の壁に突き当たるのは明白だ。

買収話を最初にリークしたWSJの翌日の追加レポートによれば、最近のSunは「製品への求心力の低下」「複雑なコスト構造」「株主からのプレッシャー」の三重苦に悩まされ続けていたという。これらを引き起こした原因の1つはIBMとHewlett-Packard (HP)の二大巨頭に加え、PCサーバでローエンドから攻勢をかけてきたDellにも苦戦を強いられていることだ。特に、PCサーバの性能向上やソフトウェアの進化がUNIXサーバの独壇場だった大規模システムの牙城を侵食しつつあり、Dellに直接顧客を奪われるケースも顕在化してきた。

興味深いのはコスト構造で、レポートでは同社を去ったMySQL創業者であるUlf Michael Widenius氏のコメントを引用して「(CEOの)Schwartz氏は問題を把握しながらも、その部分の解決に苦しんでいる」と中間管理層の官僚的体質を指摘している。またSunは、「株主らが理解不能な」大きなコスト構造上の問題を抱えており、これが不満の種になっているという。同社は売上減速とこれら指摘を受け、昨年秋に全従業員の2割弱を減らすリストラ計画を発表したばかりだ。

こうした経緯もあり、半年前には主要株主らが経営陣に対して「買収または合併相手」を探すよう圧力をかけたというのだ。すでにIBM以外の買収候補とも交渉を行っており、その中にはHPやDellも含まれていたとWSJでは報じている。だが最も有力候補となったのがIBMで、その理由は「IBMならこの組織をうまくコントロールできるだろう」という期待感のようだ。IBMとSunの両社では同報道に対する正式コメントを断っているが、押し迫ったタイムリミットの中で水面下での交渉が進んでいるものと思われる。

米Sun Microsystemsの2008年10-12月期の決算報告書の抜粋。x64サーバを中心に成長分野が見られるものの、依然としてSolaris/SPARCシステムやストレージが主力のビジネスである