35,000人のランナーたちが、吹きさらす南風と冷たい雨のなか走った東京マラソン2009。大規模な都心の交通規制、有名人参加者たちの多彩さ、積極的なメディア展開など、話題が尽きないイベントだが、今回はこの祭典に関わる数字に注目し、そのスケール感をあらためて感じてみたい。そして「配布された人形焼はランナー全員が手にできたの?」など、定点観測した際に得たこぼれ話も少し添えつつ、素朴な疑問を解いてみる。
走る人+支える人で東京ドームの観客席が埋まる……48,000
東京マラソン2009のランナーは35,000人。そしてそれを支える個人・団体・都立高校生らによるボランティアの人たちは約13,000人。東京ドームのプロ野球開催時などの観客収容人数が46,000人弱なので、走る人と支える人で東京ドームが完全に埋め尽くされ、さらにあふれることになる。ちなみに同球場で公式発表されている「収容人数」は55,000人。これはマウンド内にも席を特設するなどして、コンサート等を開催するときなどの席数も含めた平均的な数字となっている。
沿道からの飲食物配給に新メニューが2種類登場……11,000
バナナ、人形焼、梅干、チョコレート……。走る人だけに許されたこれら給食メニューに、今年は「かなり暖かい天候になることが予想される」(東京マラソン事務局)として、新たに2種類の給食が追加された。その新メニューは、スタート地点や10km地点で配られるオレンジ約6,000個と27kmで配られる塩飴約5,000個。オレンジは築地市場協会が提供している。塩飴が配られる27km地点とは、水天宮が近くにある人形町付近で、ここでは人形焼や梅干なども配られているので、まさに給食激戦区だ。
人形町で人形焼をもらえる確率は3分の1以下!?……37,000
さて、給食激戦区の人形町で配られる人形焼の数は約10,000個で、ランナー全員の手には渡らない。だが、先述のメニューの追加の理由がなんとなくわかる気にさせてくれる計算結果もある。人形町(27km地点)で配布される人形焼・梅干・(新)塩飴の合計数は約37,000個。そのうえ27km地点ではレーズン60 kg分も配布されている。ランナー35,000人を十分カバーしているじゃないか。マラソンの半ばを過ぎ、後半戦へ向けての栄養補給地点としても大事な地点となっている人形町の存在感を垣間見た。
1世帯で1年間、お風呂で使える量の水を用意……105,750
今年用意された水は約105,750リットル(約705,000杯分、1杯150mlで計算)。約10万リットルの水が都心に集められた。これは、1世帯あたり1回使用するお風呂の水を250リットルとすると、400日ぶんに相当。「日本の平均的世帯が1年間で使用するお風呂の水を1日で消費する」と考えるのは無謀か。用意された水の量を参加ランナーの数で割ると、ひとり当たり3リットルの水が確保されていることになる。
東京マラソンの日の経済効果……37,600,000,000?
あるテレビ報道によると、一部の専門家が算出した東京マラソン2009の経済効果は376億円だと伝えている。実際に、同マラソンのコース周辺の街には影響を及ぼしているのだろうか。定点観測を行なった人形町の商店街に聞くと、飲食店の売上げは東京マラソン開催日には、通常の日曜日の1.5倍から2倍に上昇するという。確かに歩いて外から飲食店を眺めてみると、そのほとんどのところで席が埋まっている。いっぽうで、いつもより人が少なくなるところもある。安産祈願と子授けの神社である水天宮もそのひとつ。赤ちゃんを抱える家族は電車やバスなどの公共交通ではなくクルマを利用するらしく、厳しい都心の交通規制を察した人が多かったのか、前日の土曜日がお参りする人でごった返し、東京マラソン当日は参拝者数が通常より少ないという。
以上、ダダダっと数字をあげて東京マラソン2009の周辺を眺めてきた。東京マラソンの規模の大きさを感じることができただろうか? だが、来年はこうしたウンチク的な話題ではなく、自分のタイムにこだわった東京マラソンを目指したい(当選確率は低いが……)、と筆者は思った次第である。
注:記事内の数字データは一部を除き、東京マラソン事務局が発表したものを参照にしています。