3月20日から3日連続で放送するWOWOWの大型企画『ドキュメンタリースペシャル』(14:30~16:00)。その初日を飾るのが、大自然によって生み出された3原色の神秘的な海の映像をたっぷりとおくる『3原色の海へ~太古の海が語る未来へのメッセージ~』だ。同番組の制作を担当する宮田徹氏に、見どころなどを聞いてみた。

宮田徹
1972年9月30日生まれ。埼玉県出身。日本大学芸術学部放送学科卒業後、ビデオ制作会社SVSに入社。朝日ニュースター、日本テレビを経て、2008年4月にWOWOW入社。これまで『クエスト~探求者たち~』、『東京国際映画祭』、『アカデミー賞』関連番組や、ステージ番組などを手掛けている

『ドキュメンタリースペシャル』の初日に放送するのが、『3原色の海へ~太古の海が語る未来へのメッセージ~』。オーストラリア・タスマニア島(バーサスト湾)の真っ赤に染まった海、プエルトリコ・ビエケス島の青白く輝く海、そして、西オーストラリア・シャーク湾の真緑色な海にスポットを当てる。水中や空中などの様々な角度から最新の撮影技術で同じ日の同じ時刻に3つの海をとらえ、真っ赤な海、青白く輝く海、そして真緑の海と、何故こんな色に見えるのかというメカニズムを解明しながら、そこに暮らす人々の姿や海との関わりなどを紹介していく。

宮田 : 「赤、青、緑の3つの色が重なると、真っ白になるというのが光の3原色の法則。全ての映像表現は、この3原色を元にしていろんな色が構成され、いろんな画面が作られています。そこにヒントを得て、インパクトのある赤い海、青白い海や真緑の海を光の3原色として打ち出しながら、地球本来の姿がそこにあるのではないかという謎解きからスタートしました。それぞれの海をただ眺めるのではなく、その海が持つメカニズムを学術的に解明しながら、そこに住む人々にもスポットを当てています。また、今回は3カ所同時刻に撮影しました。フックとして、今、あなたのいる海はどういう風に見えますか? ということを3者同時で通話するという仕組みにもなっています。海は一つなんだ、人は一つなんだ、ということを打ち出すことで、単なるネイチャー番組ではなく、自分の生活とのつながりを表現できればと考えました」

オーストラリアのバーサスト湾

とりわけ強烈なのが、バーサスト湾の真っ赤な海だ。そのメカニズムは、海の近くに生息するボタングラスの成分であるタンニンが酸化して赤くなり、川に流れついてバーサスト湾を赤く染めるという。我々の想像を超えた世界が、ここにはある。

宮田 : 「バーサスト湾の赤い海は本当にキレイ。この世のものとは思えない幻想的な海ですよ。長く見ていると、ちょっと怖くなるような感じにもなり、飲み込まれそうな迫力がありますね。バーサスト湾は、世界で唯一深海で素潜りができる海でもあります。この地を研究しているオーストラリア人の女性研究家カレン・ゴーレット・ホームズさんを主人公に、人跡未踏の地だからこそ守られている手付かずの自然を紹介します」

西オーストラリア・シャーク湾

プエルトリコ・ビエケス島の海は、単なる青色の海ではない。湾内に棲むピロデニウムというプランクトンが夜になって自然発光し、青白く輝くのだ。ピロデニウムは比較的どこの海にでも生息するのだが、これだけ集合して青白く輝く海は、極めて珍しいと宮田氏は語る。

宮田 : 「この湾の周囲には、マングローブの林があります。マングローブはピロデニウムの栄養素で、大量のピロデニウムがこの湾内に生息し、夜になると青白く輝くのです。他局でもこの海を扱っていましたが、夜のためにキレイな映像は撮れていませんでした。ですからこの映像を撮るために世界で3台しかないNC-R550Aという超高感度カメラを使って撮影に臨みました。ここまでキレイに撮れている映像はないと思いますよ。この超高感度カメラは、青い海の売りの一つです」

海の映像だけでなく、海とそこに住む人々の関わりも番組の見どころだ。

宮田 : 「プエルトルコの青い海は、観光地化されたことによる公害に悩まされています。海を守ろうとする団体の子どもたちの運動は、少しずつではありますが、実りつつあります。ストロマトライトの群生地でもある真緑のシャーク湾は、海よりもその地に住む親娘の話がメイン。エコツアーをしている父親と11歳の女の子を通して、豊かなシャーク湾を語り継ごうとする2人の姿を追っています」

番組に手応えを掴んでいる宮田氏だが、我々には想像もつかない苦労もあったようだ。

宮田 : 「赤い海は秘境にあるため、セスナ機で降りてからバーサスト湾まで2~3時間掛かりました。もちろん人が住んでいませんから、撮影スタッフとカレン様は野宿(笑)。10日間の撮影期間で撮影できたのは実質1.5日と、天候には正直悩まされました。青い海は、カメラを探すことから始めました。他局がやろうとして撮れなかったことは知っていましたから、撮影可能なカメラを探すのには苦労しましたね。あらゆるメーカーや個人所有のカメラを見せて頂き、最終的にはロケの1週間前、待望のカメラに辿り着けました」

最後に視聴者へのメッセージを語ってもらった。

宮田 : 「最大のテーマでもある色に対しては、こだわって生の色を映像として出せたと思います。90分間ゆっくりと見て頂き、海の素晴らしさを楽しんで欲しいですね。世界にはこんな海があるということを自覚して頂き、そこと自分がつながっていることを感じて下されば、制作者としてはこの上なく嬉しいことです」