映画『ターミネーター』シリーズの最新作『ターミネーター4』でメガホンを取る監督のマックGが来日、都内で短時間の合同インタビューに応じた。取材会場にはロボットスーツ「HAL」の開発者として知られる山海嘉之教授も招かれ、対談形式でインタビューが進められた。
1984年に公開された映画『ターミネーター』は、アーノルド・シュワルツェネッガーが冷酷無比な殺人マシーン「ターミネーター(T-800)」を演じて大ヒットを記録した。彼は2作目と3作目では人間を守る側に回り、敵から送られてきた最新型のターミネーターと激闘。コミカルな演技も交えてシリーズの人気を不動のものにした(そのシュワルツェネッガーも今やカリフォルニア州知事)。
"現在"を舞台とした前3部作から一転し、ターミネーター4以降の新3部作では、「審判の日(Judgment Day)」より後の"未来"が描かれることになる。初めて同シリーズに関わったマックGは、「映画を作る前に(ターミネーター1、2の監督である)ジェームズ・キャメロンに会いに行ったんだ。『未来の話にしよう』と言ったら、彼も喜んで興奮してくれた」と話す。
『ターミネーター4』ストーリー
舞台は2018年、核戦争後の荒廃した世界。人類と機械の壮絶な戦いが繰り広げられる中、「スカイネット」はいよいよ、生き残ったわずかな人類に対する最後の総攻撃を仕掛けようとしていた。一方、レジスタンスのリーダーとなったジョン・コナー(クリスチャン・ベール)は、過去の記憶を持たないマーカス・ライト(サム・ワーシントン)という謎の男と出会う。ジョンはマーカスと行動を共にし、スカイネットの活動の核心に迫っていくが、そこには驚愕の秘密が隠されていた……。
新しい「ターミネーター」は知的好奇心を刺激する
アクション映画の大作となると、派手な爆発シーンや特殊効果などに注目が集まりがちだが、マックGが重視しているのは、意外にも「脚本を読んだだけでも楽しめるようなストーリー」だという。
マックG監督「現在の観客はとても知的なので、そういう部分を刺激するようなSFが必要だと思う。例えば『マトリックス』とか『ブレードランナー』とか。最初に観るときには純粋に楽しめて、あとでまた観たときには人間の責任についていろいろと考えさせられるとか、そういうものが必要だね。
山海教授「『ブレードランナー』は暗めの話ですが、いろいろなものが入り込んでいて、観た人を刺激するものになっている。ストーリーの中で、博士のセリフから"ウィルスを使って遺伝子を書き換える手法を使っているんじゃないか"と想像できるシーンがある。最初は分からなくても、後から観て"なるほど"と思えるSFは楽しいと思います」
映画『ターミネーター』シリーズでは、ストーリーの基軸として人類vs機械の構図が描かれている。同シリーズに限らず、SF映画では科学イコール「悪」として描かれることも多いが、映像の作り手として、また実際のロボットの開発者として、2人の考えは。
マックG監督「科学の行方については、全人類がモニターする責任があると思う。今の社会は大変狭くなっており、一人一人が無責任に行動できる状態ではない。遺伝子工学を例に取ると、羊のクローンはすでに生まれており、人間のクローンも可能だろう。人間を絶滅させるようなスーパーウィルスも作れるかもしれない。いろんな技術が進歩しているが、その行方をしっかり監視しなければならない。我々は1つになって協力する必要がある」
山海教授「テクノロジは人のためにあってほしいと思っているので、それが悪いこと、軍事を含めたところで使われることに関してはかなり辛い思いをしている。HALの技術について、諸外国から"軍用に"とのコンタクトもあるが、ちゃんと断りながら、地味ではあるが普通の生活の中で使える技術に持って行くようチャレンジしている。映画には子供達が『こういう未来を作りたい』と思わせる力がある。メディアクリエイターの役割は重要だと思う」
「MSのプログラマーならスカイネットをハックできるかもね」
前作のラストで、自我を持った軍事用コンピュータ「スカイネット」が核攻撃を開始し、人間社会は壊滅的な打撃を受けた。その後の世界はどのようになっているのだろうか。
マックG監督「大都市はかなり大変なことになっているね。ロンドン、ニューヨーク、東京、シドニーとか。でも郊外にいた人たちは生き延びた可能性が高い。生き残った人たちがそれぞれの知識を出し合う。例えば(山海教授を横目で見ながら)ロボットを作れるとか、飛行機の操縦ができるとか。そうやってスカイネットに対抗するレジスタンスを作り上げていく。マイクロソフトのプログラマーが休暇でフィジーにいて助かったとしよう。彼ならスカイネットをハックできるかもしれないよね」
また戦いを通して、マックGには訴えたいことがあるという。
マックG監督「この映画に出てくるレジスタンスは、非常にグローバルな存在になっている。性による差別、人種による差別、年齢による差別もない。"1つになって戦おう"というのが、この映画の根底に流れるメッセージだよ。でも、悪いことが起こってからみんなが1つになるのではなく、今から考えて欲しい」
最後に、余談ではあるが、1つ疑問が。山海教授の会社「サイバーダイン」は、ターミネーターシリーズにも同名の企業が登場している。何か関係は?
山海教授「私の学術分野の名称が「サイバニクス」です。力を意味するのが「ダイン」。サイバニクスの技術を使って力を作り出すということで、サイバニクス+ダイン=サイバーダインとしています。ただ6時を過ぎると、「私はターミネーターが大好きです」と答えるようにしているんですけどね(笑)。
映画『ターミネーター4』は、6月13日(土)より全国ロードショー。