まず、いくつかの取り組みをみてみよう。
エネルギーでは、自社製品の消費電力効率の改善を図っている。「Ericssonのネットワークはエネルギー主導。消費電力を抑える新しい方法や革新的なソリューションを常に探っている」とWeidman氏。
最近の成果として、そのユニークな形が注目された最新の基地局「Tower Tube」がある。アンテナや無線基地機能を収容したチューブ型タワーで、これまでの基地局と比較して設置面積は半分以下、配置を工夫することで無駄な電力や冷却コストも押さえた。最大40%のCO2削減が可能であるだけでなく、景観も損わない未来の基地局だ。Ericssonが本社を置くストックホルムの郊外シスタには、すでに緑の中にTower Tubeがそびえている。
気候変動では、CO2排出量を示すカーボンフットプリントの公開がある。いまではほとんどの大手企業が公開しているカーボンフットプリントだが、Ericssonの場合は、"ゆりかごから墓場まで"のコンセプトの下、製品のライフサイクルを通じて計算した値を提示している。つまり、オペレータに納品した後、稼働中の基地局もEricssonのカーボンフットプリントとして計算しているのだ。
「一部企業は、オフィスや工場での排出量のみを計算してフットプリントとして公開しているが、これでは十分ではないと考えた」とWeidman氏。製品を納入すれば終わりではなく、「運行中の排出量もEricssonの責任と受け止めている」と説明する。実際、環境に与える影響が最も大きいのは、製造過程ではなく、運行中の無線機器だ。「全体的なものにするため、15年にわたって研究開発を行ってきた。業界で最も高度なライフサイクル評価と自負している」と自信を見せる。
1994年に無線基地局のライフサイクル評価を行い、2001年には3Gネットワークのライフサイクル評価を行った。これらの数値を研究開発にフィードバックし、製品改善につなげる。たとえばEricssonは昨年、3G基地局ポートフォリオで、2008年末時点の電力消費量を2001年比で最大80%改善することを目指した。実際はこれを上回るレベルを達成できたという。
Ericssonの2007年のカーボンフットプリントは、約490万トン。この内訳は、Ericssonが排出する直接的なカーボンフットプリントとして90万トン、サプライチェーンを含む間接的なカーボンフットプリントとして400万トンとなっている。なお、同年、無線基地局の販売台数は25%増加したが、カーボンフットプリント値は前年と同レベルを維持できたという。