結晶系にも注力
同社は、これまで薄膜太陽電池向けにターンキーソリューション「SunFab」の提供を行うなどの取り組みを行ってきた。結晶系については装置の提供は行ってきたものの、薄膜系ほど全面に押し出しては来なかった。
今後、結晶系にも注力するのは、「Siの価格下落に引きずられるように、ワットピーク(Wp)当たりの結晶系Siモジュールのコストが下がってきているため」(同)だが、同社では、「4ドル/Wpを目安としており、その予測を実現するためには、Siの価格以外も下げないといけない」(同)という。
そのため、同社では今後12カ月の間に、4つの新アプリケーションを含む7つの新製品を発表するほか、フレキシブルな労働力を伴った生産能力を倍増させる、受注パイプラインは2009年中に在庫を削減するなどの施策を行っていくという。また、「Siウェハの価格は、厚みを薄くしていくことで抑えることが可能となる」(同)としており、現在、一般的な200μmに対し、「150μmの適用についても現実味が出てきた」(同)とする。
一方の薄膜系だが、「結晶系の値段が下がってきたため、薄膜系のコストアドバンテージが出にくくなりつつあるが、まだまだ実際の価格差は大きい」(同)のが実情であり、「ターンキーの場合、価格そのものよりも、立ち上げ期間や歩留まりなどを中心に、コストの削減や新技術の導入についての話をする時期に突入した」(同)とする。
ちなみに、同社のSunFabの顧客の状況は2008年1月では、工場を建設開始したのが4本、実際にラインを納入したのが1本だったが、2009年2月現在では、建設開始ラインが14、納入ライン数が8、その内パネルを実際に生産開始したのが6ライン、さらに量産まで達したのが3ラインとなっている。
しかも、工場の立ち上げ速度は、初めて納入した工場では地鎮祭から初モジュールまで10カ月、初モジュールから量産まで5カ月かかっていた(このうち、初のパネル製造にかかる立ち上げ期間は約5カ月)のが、現在の立ち上げ期間は3カ月以下まで早まっており、工場が目標電力まで達するまでの期間もそれに併せてかなり短くなってきているという。
なお、同社の薄膜系の変換効率は「実験室レベルのタンデム構造で9%、2010年には10%を達成できる計画」(同)としており、渡辺氏は「薄膜系で(変換効率)10%を実現すると、世の中での捉えられ方が変わってくる」ことを強調する。
「ドイツやスペインなどでのFeed in Tariffs(FIT)制度により薄膜系は市場を拡大した。イタリアやギリシャなどもそれに続く動きを見せているが、一方で、電力買取価格引き下げの動きも見られる」(同)と、欧州での太陽電池市場の行方は不透明としているが、その一方で、「米国はオバマ新大統領がエネルギー政策を打ち出していることからも市場の拡大が期待できる」(同)としたほか、「遅れをとっていた日本も、太陽光発電によって発生した電力を電気事業者に1kwh当たり50円程度で買い取ることを義務付けるという動きを見せており、将来が期待できるようになった」(同)とし、「政府や市場の思惑などが介在するため、一概にどうなるとは言えないが、(日本は)間違いなく成長が見込める地域になる」と結んだ。