30年以上、生命保険の仕事に携わってきた出口治明ライフネット生命保険(以下、ライフネット生命)社長。生命保険は長期の契約であり、生涯を通して支払う保険料は1,000万円を超える場合も稀ではない。それほど高価な買い物であるにもかかわらず、生命保険を「比較して、納得して」購入する例はほとんどない。そんなマーケットに疑問をもった出口氏の挑戦が始まった。
確実に貧しくなった日本人。特に子どもを産み育てる20~30代の貧しさが目立つ
――ライフネット生命を設立された理由を教えていただけますか?
出口「一言で言うと、この会社をつくったのは、表1・2のグラフが大きな理由のひとつです。ご覧になってわかるとおり、日本人の平均所得はこの10年で15%ぐらいダウンしているんです。
【表1】1世帯当たりの所得金額
【表2】世帯主の年齢階級別に見た1世帯当たりおよび世帯1人当たり平均所得金額
10年前は657万円で、一昨年が566万円ですから、金額で約90万円、下落率にすると15%ダウンです。これは厚生労働省の調査ですから間違いないと思いますが、日本人は確実に貧しくなっています。格差社会が現実のものとなっているんですよね(表1)。
さらに衝撃的なのは、年代別に見たときに、もっとも所得が低いのは20歳代、30歳代ということ。平均が下がっていると言えばほとんどの人は、『高齢化が進んでいるのだから当たり前』と言いますが現実は違うのです。20代、30代が一番貧しいんですよ。1人当たりにすると、29歳以下が166万円、30~39歳が181万円。70歳以上も181万円ですが、それにしても若い人が貧乏なことに変わりはないです。
20代、30代の赤ちゃんを育てる世代の給与がこんなに低い国を僕は好きではないし、サスティナブル(持続可能)じゃないと思うのですが、それは投票所に行く話で民間の企業の話ではありません。
そこで、民間の保険会社として何ができるかを考えたときに、大手生保が売っているような月額1万5,000円とか2万円もする高い保険料の商品を、こういった所得の若い人たちに僕は売る自信がない。とても売れないと。」……続きを読む