既存の資産やスキルをそのまま活用、Oracle DB上のアプリから透過的アクセス
Exadata Storage自体は、このようにSQLのクエリ問い合わせに対して必要最低限のデータのみを返答し、データ取り出しの高速化に最適化されたハードウェアだ。テーブル同士のJOINや計算/集計関連の処理は、問い合わせを行ったデータベース管理システム(DBMS)、つまりDBサーバ側で行う。これが両者間での役割分担となる。DBMSには既存のOracle DBがそのまま利用でき、利用中のアプリケーションも変更なしにそのままExadataへの透過的なアクセスが可能。「既存の資産や管理者のスキルをそのまま有効活用できる」(Loaiza氏)というのがメリットだ。現在はx86版Linuxで動作するOracle DBのみの対応となっているが、近い将来的に他のプラットフォームへも対応を進めていく予定だ。
既存資産の活用というのは大きな特徴だが、包括的なソリューションの導入を望むユーザーもいるだろう。そこで用意されているのが「HP Oracle Database Machine」だ。1つのサーバラック内にExadata Storage Serverだけでなく、Oracle Enterprise LinuxとOracle Database 11gをインストールしたDBMSサーバを搭載し、サーバラック全体が1つの巨大なデータウェアハウスとして機能する。8ノードのDBMSサーバに加え、最大14台で168TBまで拡張可能なExadata Storage、InfiniBandスイッチを内蔵し、将来的にラックの追加や内部構成の拡張でスケールアップが可能になっている。また、すべての装置がまとめて提供されることで、あらかじめパフォーマンスチューニングが行われている点でもメリットがある。
Exadata Storageの役割はあくまでデータベース用のストレージであり、実際のデータ処理や計算、結合は、接続されたOracle DBのサーバ側で行う |
ExadataとDBサーバを組み合わせて1つの巨大なデータベース専用マシンとなった「HP Oracle Database Machine」 |
Loaiza氏はExadataやDatabase Machineについて、
- x86プロセッサやInfiniBandなど標準アーキテクチャを採用したこと
- 従来までサーバ(イーサネット)とストレージ(SAN)で分かれていたネットワークを一体化してパフォーマンスを向上したこと
- 機器の追加でリニアにスケールアウトが可能なこと
- InfiniBandやHDD障害などが発生してもDBのリクエストを継続処理できること
などを競合製品と比較しての優位点として挙げている。標準技術の採用で、技術革新への素早い対応やコスト面で有利となる。またネットワークを含めてシステム全体を一体化することで、パフォーマンス向上や管理のシンプルさを享受できる。
通信、証券、小売 - 大容量データを扱う業種ほど高い効果が
Loaiza氏の講演の後半では、Exadataの早期ユーザーについての事例が紹介された。ブルガリアの携帯電話キャリアであるMobiltel(M-Tel)では、Exadataの活用で業務の検索クエリの処理速度が従来比平均で10倍ほど向上し、最も効果のあった処理で72倍の効果がみられたという。通信キャリアは顧客データを中心に膨大なデータが蓄積されるため、データベース高速化ソリューションの効果が比較的現れやすい分野だといえる。特にCRM関連のデータ抽出速度で効果が現れており、DWH高速化を目指したExadataの思想にマッチした形だ。
M-Tel同様に、通信業界の同業他社や大量のトランザクションが発生する証券関連でもExadataの効果が高い。事例として紹介されていたのは米ジョージア州アトランタを拠点とする通信業界向けデータ処理サービス企業のLGR Telecommunicationsと、先物市場で有名な米イリノイ州シカゴのCME Groupだ。LGRでは、通信事業者の保持するデータに含まれるCDR(通信履歴データ)のレポート分析を主業務としているが、従来まで30分かかっていたクエリ検索がExadataの使用で1分にまで短縮できたという。一方のCMEでも、テスト実行したすべての処理で10 - 15倍程度の効果が得られたとコメントしている。
膨大なデータを抱え込む傾向が高い業種としては、その他に小売業(リテール)が挙げられる。POSから定期的に吸い上げられるデータに加え、顧客データベースや(サプライチェーンマネジメント(SCM)など、連携すべきデータも多い。商品やサプライヤ管理なども悩みの種だ。だが一方で前述のリアルタイム処理による迅速な経営判断を戦略に活かしやすい。事例として紹介された米Giant Eagleは米東海岸を中心に200店舗以上を展開しているスーパーマーケットチェーンで、Exadataの導入後で3 - 50倍、平均では16倍程度の処理の高速化を実現できたとコメントしている。
以上を踏まえたうえで、Loaiza氏は「非常にパワフルなハードウェアアーキテクチャを備えた製品」とExadataの評価をまとめる。同氏が特に強調するのが、従来のソフトウェア的なアプローチだけでなく、ハードウェアの権限も握ったことで強力なリソース管理機能が組み込まれたことだ。
DBMSが自身の稼働するサーバのリソースを自在に制御できるのはもちろんのこと、このリソース管理をストレージ側にまで持ち込むことでより高いパフォーマンスや可用性を得られる。例えば、ユーザーやトランザクションによってはレスポンスタイムの低下がないように優先的に権限を与えたり、データベースごとにルールに応じて使用帯域を保障したりと、3段階のI/Oリソース管理がExadataでは提供される。
これらの特徴を把握したうえで「Game Changing(ゲームの流れを変える)」な製品を体感してほしいというのが開発者からのメッセージだ。