日本が誇る世界的な建築家・安藤忠雄が建築設計を手がけた21_21 DESIGN SIGHTにおいて現在開催中の「U-Tsu-Wa / うつわ」展。現代陶芸に大きな影響を与えたルーシー・リィーを中心に、陶作家ジェニファー・リー、木の作家エルンスト・ガンペールによる3人展で、三宅一生が企画・ディレクター、安藤忠雄が会場構成を務める。会期は5月10日(日)まで。2月28日(土)には、安藤自身によるギャラリートークも予定されている。

ギャラリー2全景。全体を大きな水盤が占め、左の壁面には水が流れ、右にはサンクンコートに設えられた畑が見える

三人展の要となるのは、シンプルな中に大胆な手法や表現を取り入れ、現代陶磁器の流れに大きな影響を与えたルーシー・リィー(1902~1995)。リィーは、電気窯での一度焼成によって豊かさと深みを表すことができる釉薬を開発することで、まったく新しい視点をもった陶芸作品をつくりあげた。その水脈を受け継ぐジェニファー・リー(1956~)は、釉薬を使わずに色を入れ、手びねりの手法で作品をつくる。クレタなどの古代文明からも影響を受けつつも、繊細な色彩や霞がかった模様など独特な自然観を作品に投影している。また、20年あまりの間、木という素材との対話を続けてきたエルンスト・ガンペール(1965~)は、ろくろを使い、倒木や流木からその命を取り出すように、ダイナミックな自然の形状にそった彫刻をつくり続けている作家だ。

水盤。手前にルーシー・リィー、奥にジェニファー・リーの作品が配されている。作品の配置には3人の星座が関係しているそうだ

ギャラリー2から見たサンクンコートの畑

サンクンコートの畑を階段から望む

ルーシー・リィー / ボール(1965)[左手前]ほか

本展の目玉のもうひとつは、安藤忠雄の建築した空間で、会場構成を安藤が担当しているというまたとない機会に恵まれたという事だろう。企画ディレクターを務める三宅一生はルーシー・リィーと縁が深く、1989年に日本で初めて「ルゥーシー・リィー展」を企画し、大きな反響を得た。その際に会場となった草月ギャラリーでの会場構成を安藤忠雄が担当しており、今回、三者ふたたびの出会いとなった。

ルーシー・リィー / コーヒーポット(1966)

ルーシー・リィー / ボタン(1940年代)

安藤はルーシー・リィーの作品を「一つ一つが前世紀の百年を陶芸に賭けて生き抜いた彼女の人生の結晶のようだ。モダニズム造形美の極みともいうべき、優雅に研ぎ澄まされたフォルム。美しさと同時に温かみを感じさせる、微妙でデリケートな陶器の素材感。あの白に輝く器たちの透明感は一体何なのかと、彼女の作品を目にするたび、不思議な感動を味わう」と評している。本展での会場構成にあたって安藤は「彼女らのみずみずしい感性がより直接的に伝わるような空間演出を考えた」としており、3人の作品を大きく2つの展示室にわけて展示した。ギャラリー1には砕いたガラスを敷き詰めてガンペールの作品を配し、もうひとつのギャラリー2には、壁面に水が流れる空間に、巨大な水盤をおき、そこにリィーとリーの作品を浮かべている。サンクンコートには麦が植えられており、水と土がやさしく包んでいるような会場構成となっている。

ジェニファー・リーの作品。水面に作品が映し出されている

エルンスト・ガンペールの作品。生木から削り出したもので、乾燥するに従い変形していく

エルンスト・ガンペールの作品。砕いたガラスが敷き詰められている

小宇宙を内在する「うつわ」を愛で、さらにそれらを包み込む大きな「うつわ(=建築)」も堪能する。楽しみの多い展覧会だ。