エンジンの改良で燃料消費をより少なくする努力も続く(ルフトハンザ機)

国際線を運航する航空会社が燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)額の値下げを続々と発表している。全日本空輸(ANA)は16日、今年4月1日から6月30日までの燃油サーチャージ額を現行の9割近くまで下げると発表した。たとえば欧州・北米・中東は2万2,000円から3,500円に、ハワイ・インドは1万4,500円から2,000円に、タイ・シンガポール・マレーシアは1万2,500円から1,500円に、韓国は2,500円から200円に値下げとなる。

2008年7月をピークに、原油の価格とともに航空機のジェット燃料(シンガポール・ケロシン)市場価格も大きく下落した。日本航空(JAL)やANAの場合、ケロシン価格が3カ月平均で1バレル当たり60米ドルを下回った場合は、この付加運賃を廃止するとしているが、「今年4月から6月の燃油サーチャージ額を決定する対象期間だった昨年11月から今年2月までのケロシン市場価格の3カ月平均が、1バレル当たり平均64.22米ドルとなったため、金額を改定することにした」(ANA)。

そうしたなか、ベトナム航空は2月17日付けで3月20日以降の燃油サーチャージ廃止を国土交通省に申請した。外国航空会社の場合、これまでも燃油サーチャージの徴収を必要としない、あるいは減額したい意向もあったが日系の価格に合わせる形で燃油サーチャージを設定していた。しかし、今回の大幅値下げでその"縛り"が外れた格好となった。ベトナム航空に追随する外国航空会社は今後増えていくだろう。

航空各社の燃油サーチャージの大幅値下げや廃止の裏には、需要喚起を狙う意図がある。ケロシン市場価格の大幅な値上がりで昨年10月から12月の間に燃油サーチャージは史上最高値を記録したが、ほぼ同時に世界的な経済不況に突入。この"二重苦"により世界の航空需要は一気に冷え込んだ。航空市場を活性化するために、航空各社は燃油サーチャージの値下げ幅をより大きくしたのだ。

ただ、燃油サーチャージの額には航空券が購入(発券)された日の金額が適用されるため、3月までの購入と4月以降とではその額に大きな差が生じる。ANAで欧州や北米への渡航する場合、3月までは1人当たり往復4万4,000円かかるが、4月以降は同7,000円にまで下がる。より早く旅客を呼び戻したい航空各社では、その"不公平感"を是正する類の運賃も出している。ANAは「3月31日までに購入することで割安になるエコノミークラス割引運賃『エコ割春一番』を発売。4月・5月出発分が対象だが、乗客の燃油サーチャージ負担を実質前倒しで軽減することで需要の喚起を狙ったもの」としている。