既報のとおり、Native Instrumentsが「The NAMM Show 2009」で発表した音楽制作ツール「MASCHINE」が3月4日に発売される。発売元のディリゲントは発表会を開催し、実際の使い方などを披露した。その模様をレポートしてみたい。
MASCHINEは、サンプラー・エンジンをベースにサンプルデータを組み合わせて曲を構築していく専用ソフトウェアと、AKAIのMPCシリーズなどを彷彿させるリズムマシン風のインターフェイスを備えた専用ハードウェアをパッケージ。ハードウェアについては、USBでPCやMacと接続して使うが、オーディオインターフェイス機能が搭載されていないため、別途用意する必要がある。
今回の発表会では、MASCHINEを利用した曲作りの手順がデモで公開されたが、印象に残ったのが、ハードウェア側の操作だけでほとんどすべての作業が完結してしまうこと。ハードウェア上に液晶パネルが用意されていることによって、PC側のモニタを確認することなく、スムースに作業が進められるワークフローはなかなか快適そうだ。
基本的な曲制作の流れは、まずサンプルデータのキットを読み込み、それを元に数小節程度のパターンを構築する。そのパターンを並べていくことでソングを作り上げるという、まさにグルーブ・ボックス的なものだ。MASCHINEには予め1万4,000個以上、総量5GB以上というサンプルデータが用意されているので、まずはそこから好みのキットを読み込む。そしてパターンを打ち込んでいくのだが、これは16個あるパッドを利用してリアルタイムに演奏するも良し、ステップシーケンサで入力していくことも可能だ。リアルタイム入力時にはクォンタイズを効かせることもできるので、多少のモタリなどもキレイに補正される。また、AKAIのMPCにも実装されているようなノートリピート機能も搭載しているため、細かく刻むハイハットの打ち込みも効率よく行える。一方、このパッドには赤いLEDが埋め込まれており、ステップ入力時には、この光を利用したわかりやすい打ち込みができるようになっている。
もちろん、入力できるのはドラムなどのリズム系だけではない。ベースやピアノなどを重ねていくことも可能で、16個のパッドをキーボードモードとして使うことにより、メロディー入力もできるようになっている。また、読み込んだ音色にフィルターをかけたり、エンベロープをいじるなど、シンセサイザとしての音色作りも可能となっているので、多彩な音楽シーンでの使用が想定できそうだ。さらに20種類以上のエフェクトが搭載されているため、各サンプル・サウンドごとの個別なエフェクトや、パターンやグルーブに対してもエフェクトがかけられるなど、柔軟性は高い。最終的に作り上げたソングはミックスした形のオーディオとしてはもちろんのこと、それぞれのグルーブとしてエクスポートもできるようになっている。
今回の発表会のデモでは、スタンドアロンで起動して行っていたが、Windows、MacそれぞれのVST、AU、RTAS環境のDAWのプラグインとして動作する。実際ProTools 7で動作しているところも確認したが、プラグインとして動かした場合、各サウンドをパラアウトすることで、DAW上の各チャンネルに振り分け、個別にエフェクトをかけたり、EQ処理なども可能となり、音作りの幅は広がりそうだ。なお、ハードウェアはMASCHINE専用ソフトと連携して使うだけでなく、DAWのコントローラとしても機能する。Pro-53などNative Instrumentsのソフトシンセと連携するためのテンプレートが予め用意されているほか、Mackie Controlモード、Ableton Liveモードに変換するためのテンプレートもある。