DRAM専業メーカーのエルピーダメモリが台湾の大手半導体メーカーらと事業統合で大筋合意したと、日本経済新聞が11日付の記事で報じている。エルピーダでは直後に「現時点でそのような決定はない」と報道を否定するコメントを出しているが、もし事業統合が実現すればDRAMメーカーでは韓国のSamsungに次ぐ世界第2位の巨大企業が誕生することになる。DRAM業界では先日、業界5位の独QimondaがDRAMチップ単価の下落から破綻しており、生き残りを賭けた業界再編が動き出しそうだ。

日経新聞によれば、エルピーダが経営統合を計画しているのは業界7位の力晶半導体(PSC: Powerchip Semiconductor Corp.)、力晶とエルピーダの合弁会社である瑞晶電子(Rexchip)、8位の茂徳科技(ProMOS Techinologies)の台湾系半導体メーカー3社。エルピーダ社長の坂本幸雄氏が11日に台湾を訪問しており、台湾当局や同メーカーらの首脳と内容で合意する見通しだという。台湾は現在政府の支援を受けて半導体各社が競争力強化を進めており、新会社でもこうした財政支援を受けて経営基盤を強化する。一方でエルピーダ自身も公的資金の活用を視野に入れており、日台合同で半導体不況に立ち向かう構図が出来上がる。

半導体業界は金融危機から来る不況だけでなく、過剰供給から来る在庫のだぶつきや平均販売価格(ASP)の下落に悩ませており、特に需要予測を大幅に上回る供給が続いていたDRAM業界は一種のチキンレースの状態にあった。調査会社の米iSuppliの2008年第4四半期の業界レポートによれば、世界のDRAMチップ出荷量はほぼ横ばいとなる一方で、ASPは前年比38%も下落していたという。通常のASPの年間下落率は30%程度であり、出荷量がゼロ成長だったことを受けて全体の売上高は大幅下落、急速に市場が縮小する形となった。

現在業界はSamsungを筆頭に、韓国のHynix、エルピーダ、米Micron、独Qimondaの5社がトップ5に君臨し、他の台湾ベンダーらがそれに続く形で競争を続けている。だが5位のQimondaが経営破綻で崩れたことで、実質的に業界は上位4社に収れんされる可能性が高い。そのため台湾大手3社の南亜科技(Nanya Technology)、力晶、茂徳といった6位以下のベンダーは前述の上位ベンダーらとの協業を進め、生き残りの道を探っている。南亜は以前までQimondaと提携していたが、最近ではMicronとの合弁製造会社を設立するなど急接近している。茂徳はHynixが株式取得に乗り出すなど接近が見られていたが、今回の報道にもあるように最近はエルピーダとの提携を模索しているようだ。こうした提携が進むことで、Samsung、エルピーダ+力晶+茂徳、Hynix、Micron+南亜という勢力分布が出来上がる。このように事業合併や提携で企業体力を高めることで、規模の経済で競争を有利に進めていく狙いがある。