Lunascapeは先月、これまでβリリースをしてきたLunascape 5.0のRC版を公開した。昨年正式リリースしたGoogle Chromeとの比較が興味深いところであろう。スピードに特徴のある両ブラウザ。ベンチマークを行い比較してみた。

今回のテストは、JavaScriptエンジンの実行速度を測定するSunSpider、そしてWebmonkey StopwatchというWebページを読み込む時間を測定するベンチマークを実行してみた。なお、このベンチマークを採取した環境は以下の通りである。

  • マザーボード:Asus P5B-VM
  • CPU:Intel E6600 2.4GHz
  • メモリ:DDR2 2GB×2
  • グラフィックカード:NVIDIA 6800GT
  • HDD:WD8008D(80GB)
  • OS:Windows XP SP3

インターネット接続は、FTTHである。

SunSpiderのベンチマーク

まずは、SunSpiderベンチマークを行ってみた。SunSpiderベンチマークは、JavaScriptエンジンのレンダリングの実行速度を測定するもので、3Dレイトレーシング、暗号処理、文字列処理などの26項目のテストを行い、その結果を表示する。表示された数値はミリ秒単位で、数値が低いほど高速となる。純粋にJavaScriptエンジンの性能評価を行うことができるベンチマークである。最近のWebブラウザの"最速"をめぐる根拠として、このベンチマークの結果が使われることも多いものだ。さて、結果は表1の通りである。

表1 SunSpiderの実行結果

順位 Webブラウザ
1位 Lunascape 5.0.0 RC(Gecko) 1005
2位 Google Chrome 1.0.154.43 1012
3位 Lunascape 5.0.0 RC(WebKit) 1674
4位 Lunascape 5.0.0 RC(Trident) 32953

図1 Lunascape 5.0.0RC(Gecko)

図2 Lunascape 5.0.0RC(WebKit)

図3 Lunascape 5.0.0RC(Trident)

図4 Google Chrome 1.0.154.48

Geckoエンジンを使用した際のLunascape 5.0RC版とGoogle Chromeとの差は極めて小さい。ベンチマークを数回取った結果によっては、逆転することもあった(当然ながら、筆者以外の環境では、異なる結果となるかもしれない点を申しそえる)。他のWebブラウザなどと比較しても、この値は突出した値であり、いわゆる"最速"Webブラウザ争いは、当面は、Lunascape 5.0 VS. Google Chromeという構図が続きそうである。

Lunascape 5.0RC版では、レンダリングエンジンでWebkitを使用した場合においても相当に高速な値を出している。Webkitは、Google Chromeでも採用されているレンダリングエンジンである(Safariでも使われている)。

残念ながら、レンダリングエンジンにTridentを使用した結果については、"並"の結果しか出せていない。しかし、Tridentは、Internet Explorerで採用されているレンダリングエンジンであり、Tridentで最適化されているWebページは多いだろう。そんなWebページを表示する際には、Tridentを使う必要性がある。

Webmonkey Stopwatchのベンチマーク

続いて、Webmonkey Stopwatchのベンチマークを試してみた。Webmonkey Stopwatchは、Webページの読み込みを始めてから、そのページを完全に読み込むまでの時間を測定するもである。JavaScriptなどのレンダリングエンジンの実行性能などにも依存するが、ページの表示が速いことを確かめることができる。よくあることだが、リンクなどで移動してみると「このページ遅い」と感じることがあるだろう。そんな感覚をを数値化したもと思えばわかりやすい。

Webmonkey Stopwatchの公式サイトからコードを落とし、マイコミジャーナルのトップページを表示させてみた。その結果は表2の通りである。

表2 Webmonkey Stopwatchの実行結果

順位 Webブラウザ
1位 Lunascape 5.0.0 RC(Trident) 1281
2位 Google Chrome 1.0.154.43 1815
3位 Lunascape 5.0.0 RC(Gecko) 1995
4位 Lunascape 5.0.0 RC(WebKit) 2672

SunSpiderとは大きく異なる結果となった。JavaScriptのレンダリングエンジン性能以外の部分が関係していると思われる。また、テスト自体が、Webブラウザの性能以上に回線状態などの影響を受けやすい。しかし、iframeのレンダリング方法やページの要素の数などによって変化する。日頃、よく閲覧するページなどで実行してみると、どちらのブラウザの方が速いのか?といったことが示されると思う。

TirdentをレンダリングエンジンにしたLunascape 5.0RCが1位であったことは、SunSpiderの結果からみるとやや信じられない感もある。しかし、Webページがどのレンダリングエンジンに最適化されているかといったことが大きな要素になっていると推察される。

現時点でも、Internet Explorerのシェアは高く、Webページの多くは、Internet Explorerに最適化されている可能性が高い。Lunascape 5.0RCでWebKitをレンダリングエンジンに使用した場合の結果をみるに、単純にJavaScriptエンジンの性能だけでは、Webブラウザの速さを決定できないということであろう。

一方、Google Chromeに関しては、いずれでも1位との差は非常に小さく、総合的に速いという見方もできる。どのようなWebページに対しても、それなりの速さを享受できるであろう。図5から図8までが、その結果である。

図5 Lunascape 5.0.0RC(Gecko)

図6 Lunascape 5.0.0RC(WebKit)

図7 Lunascape 5.0.0RC(Trident)

図8 Google Chrome 1.0.154.48

さて、今回のベンチマークの結果からいえることは、JavaScriptの実行速度が速さだけが総合的な判断基準にならないということであろう。Webmonkey Stopwatchのベンチマークの結果のように、体感に大きく関わる要素なども加味する必要がある。また、今回は試すことはできなかったが、CPUやメモリ使用率などもある。Webブラウザを使う場合には、他のアプリケーションを実行していることも十分考えられるからである。実際の使用感は、そのような環境でこそ問われるのかもしれない。