今後はミステリーや重厚な作品が来る
――これから、川村さんはどんな作品をプロデュースしていきたいのですか?
川村「今は7~8本の企画を同時に動かしてます。原作モノばかりでなく、オリジナルもやりたいと思っているんです。実は、これまでは、意図して原作モノをやっていたところもあります。原作モノはオリジナルに比べて2段ロケットみたいなもので、ヒットの下地がある。原作が出ている時点で、世の中に受け入れられる下地があるんです。オリジナル物は1段ロケットで高いところまでいかないといけない、つまりよっぽどそのネタが面白くないと勝負にならないと思います。どれだけ原作者の方が、原作を作るのに、身を削りエネルギーを使っているかを考えると、僕はこれまで、まだオリジナル作品をやるスキルが足りないと思ったんですよ。20代で8本原作モノの映画をやってそのスキルを培ったんです。それを30代は活かしたい。具体的に言うと、「DMC」みたいな、あまりにもお祭り的な作品をやってしまったので、今度は少し暗い作品をやってみたいですね」
――次の「暗い作品」というチョイスにも、プロデューサー的な嗅覚が働いているのですか?
川村「邦画でホラー映画ブームがあって、次に純愛ブーム、最近はコメディが来ていますよね。次はミステリーだったり、暗い感じの作品が流行るような気がするんですよ」
――ブームの話が出ましたが、邦画は以前とは比較にならない程の好調ぶりです。川村さんはプロデューサーの視点から、この現状をどう認識していますか?
川村「僕は邦画のJ-POP化だと思ってるんですよ。かつて音楽の世界で、洋楽への憧れから、洋楽の要素を取り入れた邦楽が流行り、主流となった。映画もそれと同じで自然な流れだと思います。だから、今の邦画の好調振りは、邦画バブルじゃなくて、邦画のJ-POP化なんだと思います。僕や、僕と同世代の制作者は、洋画を観て育ち、作る立場になった。だから洋画に負けない企画の作品を作ろうとしている。昔よりも、脚本のレベルは確実に上がっていると思うんです。一方で観客は初デートが邦画だったり、最初に感動した映画が邦画だったりする人が増えてきた。そういう体験をした人は、それからも邦画をチョイスしていくと思うんですよ。そういうふたつの流れがあるから、今は日本映画が好調だと思うんです。でも、今J-POPが売れなくなってきてるじゃないですか。それと同じで、面白いモノをちゃんと届けないと、あっという間にそっぽを向かれちゃうと思いますから、しっかり面白い作品を作らないとダメですね」
――これかれも、川村さんのような若いプロデューサー達が、お客さんに評価される面白い作品を作っていくのでしょうか?
川村「僕のような若いプロデューサーたちは、常識がない(笑)。非常識の力。むしろ、そこにしか、面白い作品を作るための活路がなかった。ベストセラーは先輩たちが映画化しちゃうんだから、そこしかなかったんです。僕らより上の世代の映画プロデューサーたちは、『DMC』にはあまり注目しないだろう、だから自分でやろうと・・・・・・。企画立ち上げ時は、ある種、隙間産業的な目線ですが、そんな新しい物をちゃんとメジャー作品として提案して成立させれば、お客がちゃんと評価してくれる。面白い時代になっているとは思います。ただし、尖がった作品がヒットするとまた大変(笑)。それは、劇薬みたいなものだから、常に新しい何かを提案しないとならないから、本当に大変ですけどね」
――今日はどうもありがとうございました。
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インタビュー撮影:岩松喜平