60枚/秒の超高速連写と、最大1200fpsのハイスピードムービー機能を搭載したデジタルカメラ「HIGH SPEED EXILIM EX-F1」の発表から約1年。9日に開催された、カシオ計算機が満を持して投入する新ハイスピードデジタルカメラの発表会の模様をレポートする。

カシオが打ち出した第3世代デジタルカメラとは……

新たな歴史をつくる第3世代

「デジタルカメラの歴史をつくってきたカシオが自信を持って送り出す」と、新製品を語る専務取締役 鈴木氏

今回発表されたのは、高速連写とハイスピードムービーを搭載したハイスピードモデル「HIGH SPEED EXILIM EX-F1」および「HIGH SPEED EXILIM EX-FH20」の機能をスリムなコンパクトサイズに凝縮した新製品「HIGH SPEED EXILIM EX-FC100」と「HIGH SPEED EXILIM EX-FS10」。発表会の冒頭、同社 専務取締役 鈴木洋三氏はこれらを「従来の製品とは一線を画す全く新しいデジタルカメラ」とし、先だって発表された動画と静止画を合成するダイナミックフォト機能を搭載した「EXILIM ZOOM EX-Z400」「EXILIM CARD EX-S12」と合わせて「1995年に発売した液晶付きデジタルカメラ『QV-10』、2002年に薄型コンパクトカメラのジャンルを切り開いたカード型の『EX-S1』に続く第3世代のデジタルカメラ」と位置づけた。

第3世代ではハイスピード技術を展開させた製品をリリースしていくという

常務取締役 高島氏。EX-FC100とEX-FS10の推定市場価格は5万円前後。当初月産15万台、年間で150~200万台を予定しているという

続いて登壇した同社常務取締役 高島進氏は、これからデジタルカメラ事業の軸となってくるのは「"ハイスピード"による技術の展開である」と述べ、「そのひとつはハイスピードCMOSセンサーを用いた製品の開発により、ハイスピードジャンルを拡大すること。もうひとつは高速画像処理によってデジタルカメラの新しいスタンダードジャンルを提案していくことだ」と語った。

ハイスピードジャンルの拡大においては、昨年プロ・マニア、ハイアマチュア向けにリリースしたEX-F1およびEX-FH20の機能を、カードサイズに収めた商品を発売。また、新しいスタンダードジャンルとしては、「今までプロユースの機材、ソフトウェアでしかできなかった、動画と静止画の合成をカメラ内で行うことができるダイナミックフォト機能により、撮る楽しさ、見る楽しさに加え作る楽しさを提案していきたい」と今年の事業戦略を説明した。そのうえで「超高速連写のハイスピード」と「高速画像処理」の2つの機軸によって新しい世代のデジタルカメラを作っていくと締めくくった。

注目の「スローモーションビュー」と「いち押しショット」

「被写体はカメラを意識しなくてよくなった」と話すQV事業部開発統轄部長 中山氏

同社QV事業部開発統轄部長 中山仁氏は新製品の説明とデモを行った。新製品の2モデルとも有効910万画素の高速CMOSを搭載しており、30枚/秒の高速連写と最大1000fpsのハイスピードムービーを実現しているが、これにはカメラをコンパクトにするためのさまざまな工夫がなされているという。EX-F1、EX-FH20からEX-FC100、EX-FS10を見てみると、レンズスペックの違いはあるものの、基板面積、センサーユニットなどそれ以外の部分で大幅に小型化しており、さらにコンパクトサイズに収めるために、さまざまな熱対策のノウハウを蓄積している。「競合メーカーもそう簡単にこのハイピードシステムをコンパクトサイズに収めることはできないだろう」と自信をのぞかせた。

スローモーションビューのボタンを押すと液晶画面に動きがスローで再生される。最もよい所でシャッターを押すと決定的瞬間が撮影できる

ハイスピード技術には決定的瞬間を撮影する超高速連写と、目に見えない瞬間を撮影するハイスピードムービーの2つの技術があり、幅広いユーザーが気軽に使える便利な機能として「スローモーションビュー」と「いち押しショット」が搭載されている。スローモーションビューは、ボタン一つであたかも世の中が遅くなったように動いている被写体が液晶にスローモーションで表示され、シャッターチャンスを逃さないプロカメラマン顔負けの撮影が可能になるもの。EX-F1でもメニューに入っていたが、コンシューマー用ということで専用ボタンを用意したとのこと。

いち押しショットでは、数枚の候補からベストショットをユーザーに選ばせるのではなく、カメラが自動的に良いものを1枚選ぶ仕組みになっている。これはコンシューマーユーザー向け機能ということで、シャッターを押すと一番いい写真が1枚撮れていることの方が分かりやすいと考えたためだ。今後はラインアップのグレードによってベストショット以外も残す製品を出したいと考えているという

いち押しショットでは、従来集合写真などは2~3回撮影するのが通例だが、このカメラでは高速連写にブレ、顔、笑顔、まばたきなどの検出機能を組み合わせて、1回シャッターを押すだけで、連写した中から一番良い画像を自動的に選んで保存してくれるという。中山氏は「従来カメラで撮影するとき、被写体は動きを止めるのが常識だった。それがハイスピード技術によって被写体はカメラを意識しない、撮影者は被写体をコントロールする必要がなくなった」と説明。被写体の動きを制限せず、ありのままを撮る時代がやってくることを強く強調し、「そんな新しい写真文化を創っていきたい」と意気込みを語った。

2005年全日本女子空手道選手権大会無差別級チャンプオン、ワールドカップ軽量級銅メダルを獲得している小林由佳選手による演武を撮影。スローモーションビューでその決定的瞬間を撮影するデモが行われた。左は実際に「EX-FC100」を使用して試しに撮ってみた例

「ダイナミックフォト」と「EXILIMステーション」

最後に高速画像処理による新機能、ダイナミックフォトとテレビに接続できる「EXILIMステーション」についても説明が行われた。画像処理プロセッサーとして搭載されているEXILIMエンジンは、2.0から3.0、そして今回4.0と進化したことにより、世界初の動画と静止画の合成を行うダイナミックフォトを実現した。これは、20枚の連写画像からカメラが動く被写体の部分だけを自動的に切り抜いて、背景となる写真と合成する機能だ。

ダイナミックフォトを使う場合、被写体の背景は単純なものでなくても大丈夫。ただし切り抜くとき動きに反応するので、背景は動かないもののほうがキレイに切り抜ける

まず動く部分の撮影を行い、切り抜いた20枚の画像を連続して再生して動きを見せた。続けて背景となる画像を選択し、その上に動く画像を配置させることで、静止画の中に一部分だけ動きのある面白い作品ができあがった。デモでは新製品を使って約20秒ほどで高速に処理される様子が映し出された。

高速CMOSを使えばフルハイビジョンを含めて動画を撮影できるので家電との融合を考えている。しかしEXILIMステーションは今のところカシオが作るファイル形式への対応が基本。性能としてはフルハイビジョンまで再生できるようになっているが、AVCHDフォーマットなどは現時点では考慮していないという

さらにEXILIMステーションの発売を準備していることが発表された。これはSDメモリカードスロットを備え、テレビに接続して、連写画像、ダイナミックフォト画像、ハイスピードムービー、HDムービーなどを再生できる装置。テレビとはHDMI端子で接続でき高画質な再生が可能なほか、USBポートも装備し、外付けのハードディスクやプリンターともダイレクトに接続することで、パソコンなしに画像を保存、プリントができる。まだ価格、発売時期は未定としていたが、それほど高価にはならないとのこと。以上が発表会の内容だが、デジタル技術を前面に押し出し、カシオらしい自信にあふれていたのが印象的だった。