独立系投資信託会社であるコモンズ投信が、第1号ファンドを設定した。「コモンズ30ファンド」がそれだ。

コモンズ投信の会長は、日本資本主義の父と言われる澁澤栄一の子孫にあたる澁澤健氏。これまでファーストボストンやJPモルガンなど米国を代表する投資銀行、ムーアキャピタルというヘッジファンドなど、常に金融の第一線で活躍してきた識見が、投資信託会社の運営にどう反映されるのか、注目されるところだ。

同ファンドの当初設定額は、1億1,800万円。さすがに投資環境が厳しいだけに、日本株を中心としてポートフォリオを構築する同ファンドへの関心はまだ低い。ただ、沖縄から北海道まで、幅広く問い合わせが来ているということなので、これから徐々に残高は増えていくだろう。

さて、独立系投資信託会社といえば、さわかみ投信を筆頭に、最近は「おらが町投信」を標榜する独立系投資信託会社がいくつか誕生してきた。浪花おふくろ投信、楽知ん投信などが代表的なところだろう。ただ、浪花おふくろ投信や楽知ん投信の場合、基本的な投資対象は同じであり、さわかみファンドへの投資比率も高く、作りが似ている。言うなれば、特徴を説明しにくいファンドでもある。

この点、コモンズ投信の場合、これら独立系投資信託会社とは、かなりコンセプトが違っている。

一番の特徴は、「30年目線による投資」を標榜していること。言うなれば長期投資のことだが、その目線を通じて、次世代に良い社会を残すための投資を行おうというのが、コモンズ30ファンドのコンセプトだ。また、それにともなって、ファンドに組み入れる銘柄は、30年間繁栄できる企業になる。

もちろん、30年先のことなど誰も分からない。現時点で分かっている数字を使って、30年後の企業の姿をきちっと当てられる人など、まずいないだろう。そこで、同ファンドは30年目線の投資というコンセプト、あるいは30年間繁栄できる企業を選ぶうえで、財務諸表や業績といった定量的な判断よりも、その企業が持っている経営哲学、技術力、モラルなど、単純に数字では割り切れない部分を重視する。

二番目の特徴は、対話を重視するということ。ここでいう「対話」とは、運用会社であるコモンズ投信と、ファンドを保有している投資家との対話であり、あるいはコモンズ投信と、ファンドの投資先となる企業との対話である。

コモンズ投信は、定期的にセミナーなどを開催し、ファンドの運用について、投資家から吸い上げた意見を、投資先の企業に伝えていく。「運用会社が投資先企業に意見する」というと、何となくアクティビスト・ファンドを連想してしまうが、同ファンドはそうではない。アクティビスト・ファンドの場合、ファンド対企業という対立関係が軸になる傾向が強いが、コモンズ投信の場合、一方的に意見を出すのではなく、お互いに考えていこうという立場を取る。30年後、次代を担う人たちが少しでも住みやすい世界を作っていくため、「投資」の世界からアプローチするというのが、同ファンドの最大の特徴ともいえるだろう。

ちなみに、投資対象となる企業の数は、30銘柄程度に絞り込んでいく。30銘柄もあれば分散は十分に効くし、それ以上に銘柄数が増えてしまうと、運用のコンセプトがぼけてしまうというのがその理由だ。

三番目の特徴は、「三方よし」の実践。三方よしとは、ファンドの保有者、コモンズ投信、社会のそれぞれにとって良いということ。投資信託である以上、ファンドの保有者に利益還元を行うのは当然だが、それだけでなく、同ファンドは信託報酬の一定部分について、教育や医療、環境、地域再生などにチャレンジしている社会的活動・事業の支援プログラムに寄付を行う。これも、今までの投資信託にはあまりないコンセプトだ。

同ファンドは、さわかみ投信と同じように、直接販売になるため、コモンズ投信に口座を開く必要がある。同社サイトから申込手続きを取ることが可能だ。購入手数料は無料。信託報酬は年1.2075%が上限だから、比較的リーズナブルだ。むしろ、この一部が寄付に回って、より良い社会を築くことができるのであれば、安いくらいだろう。積立投資も選ぶことができ、月々3,000円から投資可能だ。