グーグルは2日、報道関係者向けの定例会見を開き、携帯電話向けOS「Android」の現状について説明した。現在の予定では、2009年にAndroidは「日本語対応・日本対応」(モバイルビジネス統括部長John Lagerling氏)を行うとしており、国内でもAndroid搭載端末の登場が現実味を帯びてきている。
Androidは、米GoogleによるLinuxをベースとした携帯OSだ。Linuxカーネル、ライブラリ、アプリケーションフレームワーク、そしてアプリケーションの各層をGoogleが一から作り上げている。Lagerling氏は、「真っ白なところから作り上げた」と表現。さらに、既存の携帯電話向けOSは「10~15年前のコンピュータのロジックに基づいている」(同)が、Androidは「最近の研究に基づく」(同)ロジックを使って開発されているという。Javaなどの動作も軽く、低スペックのハードウェアでも動作するのも特徴だそうだ。
AndroidはOS全体を無償で提供する。OSだけでなく開発環境も無償提供される |
提供されるエミュレータ。タッチパネルだけでなく、テンキー、QWERTYキーボードといった入力インタフェースもサポートする |
Lagerling氏が「革新的」と自賛するのは、AndroidがOS全体からSDKを含めて無償で提供するという点。Lagerling氏によれば、携帯の開発コストの「7~8割はソフトウェアだといわれている」とのことで、この部分のコストを大幅に低減できるという。
Androidは、開発者、キャリア・端末メーカー、ユーザーにとって「自由という意味でのオープン」(同)なOSだ。
開発者にとっては、開発したアプリケーションの配布が自由で、しかも「Android Market」によってアプリケーションが一元的に配信されるので、ユーザーにリーチしやすい。携帯のiアプリも公式アプリでなければ配布の自由度は高いが、1カ所で一元的に配信される点が優位点だ。
キャリア、端末メーカーにとっては大幅な開発コストの削減が可能になる。なお、Androidを推進する「Open Handset Alliance」への参画企業はすでに47社に達し、順調に拡大している |
開発者にとってのメリット |
AppleのApp Storeと比べると審査がゆるいため、審査を通過するのも容易であり、Lagerling氏は「YouTube(に動画をアップロードするのと)一緒」と表現する。MarketだけでなくWebサイトからの配布も自由で開発者はほとんど配信に関する制約なく開発が可能だ。共通OSに基づく端末開発になるため、Androidを採用した端末であれば世界中で同じアプリケーションが利用できるのもメリットだろう。
さらに、システムの深部にアクセスするアプリケーションも開発が可能で、例えば「電話番号入力時の画面表示」の部分も開発が行えるという。そのためLagerling氏は、「完全にオープンなシステムなので、今までなかったアプリケーションの展開も考えられる」と期待する。
自由なアプリケーション開発・配信に加えて、セキュリティも配慮されており、同社のブラウザ「Chrome」と同様に「サンドボックス」をベースにしたセキュリティシステムを導入しているそうだ。
ユーザーの自由度も高く、アプリケーションの導入だけでなく、設定のカスタマイズ、UIの変更も自由に行えるという。
キャリアやメーカーにとっては、エミュレータも含めたオープンなOS、開発環境の無償提供によって自由度の高い端末開発が低コストに可能になる。ユーザーや開発者の自由度を抑えるような端末開発も可能だが、「Googleがお付き合いする限りはオープン」(同)な端末の開発を求める意向だ。
さて、気になる日本での展開だが、すでに国内3キャリア(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクモバイル)は、Androidを推進する団体「Open Handset Alliance」に参画しており、Android搭載端末の開発を検討している。
Android側の日本語対応は、現在のロードマップでは2009年中となっており、日本語入力に加え、「日本対応」(同)も行われる予定だという。これは、単純に日本語入力や表示などの「日本語対応」を行うという意味ではないとLagerling氏は話す。
Lagerling氏は、日本人の携帯電話の使い方、文化を「否定する必要はない」という。音声やテキストメッセージだけでなく、携帯コンテンツや携帯サービスなどを利用する日本の携帯文化に「学ぶところもある」とLagerling氏。
また、日本の携帯電話の「いいとこ取りをしたい」と話し、日本の携帯ユーザーが好んで利用している独自の機能と、オープンでフルにインターネットを利用できるという2点を融合させることを狙っている。こうした日本の携帯文化もカバーしていくのが「日本対応」ということのようだ。ちなみにLagerling氏は、携帯向けのコンテンツやサービスは、米国でもニーズがあることを「iPhoneが示した」(同)と指摘している。