KDDIは29日、2009年春モデルの発表に合わせ、新サービスやキャンペーンを開始することを発表した。歩行者ナビ「EZナビウォーク」の新機能や、Flashを使った動きのあるメール「デコレーションアニメ」、環境への取り組みなどで、これらによって「アンビエントライフを実現するために生活に溶け込むケータイ」(コンシューマ事業統括本部長・高橋誠取締役執行役員常務)を目指していく。
今春の新モデルで、KDDIは生活に溶け込むケータイをテーマに掲げた。特に、これまでも同社が力を入れてきた音楽やスポーツ、映像の分野で、春モデルが「プラスアルファのエッセンス」(小野寺正社長)を取り入れるようにしたい考えだ。
音楽配信とCD販売の相乗効果
音楽の分野では、音楽機能を強化してウォークマンブランドを冠した「Walkman Phone, Premier3」(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製)、タッチパネルで11種類の楽器演奏ができる「Touch Session」機能搭載の「CA001」(カシオ計算機製)を投入。音楽を聴くだけでなく演奏もできることで、より音楽が生活に溶け込むことを狙った。
HMVジャパンと連携したキャンペーンでは、CDのようなパッケージビジネスと、音楽配信のコンテンツビジネスの融合を狙った。「(音楽コンテンツの)ダウンロードが増えるとパッケージ(の売り上げ)が縮小する」(同)点をどうにか解消したいと高橋氏は言う。
キャンペーンでは、対象楽曲をEZ「着うたフル」、EZ「着うたフルプラス」をダウンロード購入したユーザーが、その曲が収録されたCDをHMVで購入する際に、「ほぼ着うた分の(料金に当たる)ポイントが還元される」(同)というもの。還元されるのは300HMVポイント(300円分)で、着うたフルを購入してからほかの曲を聴きたくなってCDを購入しても無駄にならない。
このキャンペーンでコンテンツとパッケージの「相乗効果」(同)を目的としており、今後両社はこうしたサービスを発展させていく考えだという。
スポーツをして社会貢献
スポーツ分野では、「au Smart Sports」の「Run & Walk」で会員数がすでに約70万人に達し、順調に拡大を続けている。「スポーツも携帯と一緒に生活に溶け込ませていこうという取り組み」(同)だが、さらに環境・社会分野への取り組みを進める。昨年11月から開始した「屋久島Walk」では、Run & Walkで記録された1kmを1円として、屋久島の環境保全活動へ募金されるキャンペーンを行っている。1月30日までのキャンペーンだが、1月22日時点ですでに約250万円(250万km)が集まっているという。
これをさらに進めたキャンペーンが、今後始める「Green Road Project」だ。屋久島Walkと同様に、ユーザーが走った(歩いた)1kmごとに1円分、auが緑の種を購入。その種を全国のauショップなどで配布し、それを植えてもらうことで「街に緑が増える」ことを目標としている。こうした積み重ねで「社会に対してスポーツが溶け込んでいかないか」(同)と期待する。キャンペーン期間は2月1日から4月30日まで。
携帯で簡単にスライドショーを作成
映像分野では、CA001の3Dディスプレイの搭載が大きなトピックで、「これをきっかけに3Dにもチャレンジしていきたい」(同)と意気込む。それに加え、写真ではデジカメブランド・サイバーショットの名を冠した「Cyber-shotケータイ S001」と、8メガピクセルのCCDを搭載、夜景に強い「SH001」を用意する。
「いつでもどこでも」をキーワードとして開発されたモデルとなっており、S001は「世界中の思い出を撮る」というコンセプトで、海外で使えるグローバルパスポートに対応。SH001は夜でも鮮明に撮影できる点がポイントだ。
さらに、新サービスとして「MYスライドビデオ」を開始する。これは、携帯で撮った写真を使って携帯上でスライドショー形式のビデオが作成できるサービスだ。撮影した画像をメールで送信し、背景や音楽、トランジションがセットになったテンプレートを選ぶと、au側でそれらが合成され、スライドビデオが作られる。
作られたスライドビデオはURLが送られるので、そこからダウンロードできる。そのURLを家族や友人などに送って共有することも可能だ。MYスライドビデオは、携帯のプレイヤーアプリ「LISMO Player」で再生できる。映像配信LISMO Videoを応用しており、320×240・30fps・1.5MBの動画として保存される。スライドビデオの長さは45秒程度で、5枚程度の画像をはり付けられる。PCにバックアップはとれるが、PCでの再生には対応していないようだ。
テンプレートはコンテンツプロバイダーから提供される予定で、ディズニーなどのテンプレートの提供が予定されている。同社では、ちょうど着うたと同程度の45秒間の動画ということで、着うたフルに押されて売り上げが停滞している着うたの新たなサービスモデルとしても提案。着うた用に作成した楽曲データをかんたんに流用できるとしている。
MYスライドビデオのサービス開始は3月下旬から。LISMO Videoに対応したカメラ付き携帯であれば利用できる。
より使いやすくなったナビウォークとFlashメール
歩行者ナビの「EZナビウォーク」では、インタフェースを改良し、「シンプルモード」「フルモード」の2つのUIを導入する。すでに550万ユーザーを抱えるナビウォークでは、従来のUIでは使い方が難しいという声があったということで、メニュー画面を整理し、定番機能にかんたんにアクセスできる「シンプルモード」を追加。フルモードもトップ画面に検索窓を設けたり、メニュー構成を整理するなど改良を加えた。
また、ナビゲーション中の地図に曲がり角での矢印表示や、経路上にある横断歩道や踏切、会談などのガイダンスアイコンを表示することで、よりルートが分かりやすくなった。周囲の状況が分かりやすい3Dナビでは、通常の2D表示と2画面表示することが可能になった。通常の地図表示だけでなく、上空から撮影した写真による地図表示もサポートする。
新端末から新しいEZナビウォークを導入するほか、今後旧端末向けにもバージョンアップを行う予定だ。
もう1つの新機能が「デコレーションアニメ」。従来のテキストメール、デコレーションメール(HTMLメール)に追加されるメール機能で、Flashを使うことで動きのあるメールが作成できる。
画面でプレビューを見ながらかんたんに作れるのが特徴で、さらにメール本文の「おはよう」に反応してFlashの動きが自動で変わったり、受信者がボタン操作をすると、それに併せて動きが変わったりするなど、よりインタラクティブ性が向上する。
テンプレートは16の公式サイトから提供され、対応機種はH001、S001、T001、CA001、SH001。デコレーションアニメをPCに送信した場合は、メールソフトによってはFlashファイルが添付された形で受信されるので、そのままFlash Playerなどで閲覧できる。
Transfer Jetで新しいコンテンツ流通を
KDDIでは、新たなコンテンツ流通の仕組みも模索している。現在開発中なのが、新しい無線通信規格「Transfer Jet」を使ったコンテンツ配信だ。同規格は、3cm以内の距離で2つの機器を接続し、最大実効レート375Mbpsの高速通信が可能。これを携帯に導入することで、店頭のキオスク端末でコンテンツを購入したり、携帯同士でデータを交換したり、データのバックアップを取ったり、といったことが簡単に高速に行えるようになる、としている。
これを利用することで、これまで音楽配信はダウンロード購入のみだったが、auショップのキオスク端末から購入することや、駅のポスターに携帯をかざしてダウンロードする、といったことが可能になるという。高橋氏によれば、音楽業界やほかのコンテンツの権利者側からも興味を持たれているそうだ。
こちらはauショップの店頭端末のイメージ。テーブル上に音楽CDの映像があり、テーブルに手を触れるだけでCDを選び、視聴して、それを購入できる |
CDに触れ、そのまま視聴エリアに向けて手を振るとCDが滑るように動き、視聴できる |
高橋氏は、「今までのセルラー(携帯事業)以外のビジネスも積極的に取り組みたい」としており、特にTransfer Jetは早期の導入を目指していきたい考えだ。
小野寺社長は、新サービスの導入にあたって、従来のように新端末でしか利用できないものだけでなく、旧端末でも利用できるようなサービスの導入に意欲を示す。「新モデルでないと(新サービスに)対応できないという時代ではなくなる。(旧モデルの)継続性も考えていく」(小野寺社長)意向だ。