韓国の家電メーカーLG Electronicsが、日本の携帯電話市場への攻勢を強めている。NTTドコモ向けに発売した「L-01A」は同社の予想を超える売り上げということで、今後さらに日本市場で拡大していきたい考えだ。
LGは、全世界114カ国で携帯電話端末を販売する大手メーカーだ。2003年に2,700万台程度だった全世界での販売台数は、2007年には8,000万台を超え、年間40%の成長率を達成。2008年には1億台も超えた。2007年の全世界マーケットシェアも7.2%まで拡大しており、順調に推移している。
LG Electronics Japanの広報担当・金東建氏は、この1億台という数字は、日本全体の携帯出荷台数の約2.5倍、国内のトップシェアメーカーの約10倍だと指摘。この販売台数を背景に部材調達でコストメリットが出せるのが優位点だとする。これによって部材調達、販売コストが下げられ、端末価格自体も安くできるのだという。
LGの端末は、「すべてデザインに合わせる」(金氏)というポリシーで開発され、デザインから機能を取捨選択して取り入れる形になっている。韓国本社に150人のデザイン工房を抱えるほか、日本やイタリア・ミラノ、米国などにもデザインセンターを開設して、各地域に適した端末のデザインを行った結果、多くのデザイン賞を獲得している。
技術的な部分では、米AppleのiPhone発売の3カ月前、07年3月には全面静電式タッチパネルを採用した「PRADA Phone by LG」を発売。それ以来、すでに1,000万台以上の全面タッチパネルの端末を販売しており、「タッチパネルのパイオニア」だとしている。
タッチパネルでの操作だけでなく、ジョグホイールやテンキーといったハードキーを併用したり、画面を2分割して下部に動的なキー表示をするなど、インタフェースにも配慮を行っている。
こうして開発されている同社の端末は、単純に全世界で同じ端末を販売するのではなく、各国の実情に適した端末にカスタマイズしているのも特徴だ。
たとえばL-01Aのベース端末である「Secret」は本来感圧式の端末だが、日本では静電式を採用。PRADA Phone by LGは日本と韓国だけは、ネイルを付けた女性でも使いやすいように感圧式を採用している。ほかにも、L-01Aではボタン式のテンキー、予測変換ソフト、モリサワフォントといった変更も加えている。
今年1月の家電見本市「International CES 2009」で発表されたタッチスクリーンを搭載の腕時計型携帯電話「Watch Phone」も開発中で、年内にも欧州で発売する予定だが、日本への展開については未定だという。
同社では、2010年にも携帯も含む世界3大メーカーとなることを目標に掲げている。米Strategy Analyticsによる分析では、LGの昨年第4四半期の端末販売台数は2,570万台でNokia、Samsung Electronicsに続く第3位の地位を占め、順調にビジネスを拡大している。
そうした中、同社は日本市場へも強くコミットしており、端末シェアをさらに拡大していきたい考えだ。現在はドコモにのみ端末を供給しているが、auなどほかのキャリア向けの端末供給は「あるともないともいえない」(同)というのが現状で、金氏はドコモを支援してそのシェアを拡大させ、パイを広げてその中でシェアを確保していきたい意向を示す。「国内メーカーと競争は薄い」(同)という意識だ。
LGは、端末のカスタマイズに加え、流通でも国内の商慣習に沿った取り組みを続けており、こうした点で他の海外端末メーカーとは異なる力の入れようが見て取れる。
これについて金氏は、日本が世界で第2位の携帯市場であり、こうした市場で成功しないと「真の成功ではない」(同)という認識だという。国内向け端末は高機能なため、単価が高く収益性が高い端末で、こうした端末で「日本のマーケットで認めてもらうのも大事なポイント」だという。ユーザー調査で必要とされる機能をはかりつつ、日本市場に適した端末を、ドコモの発表に合わせて投入していく考えだ。金氏は個人的な考えと断りつつ、「FeliCa機能は搭載したい」としている。
LGは、薄型テレビやレコーダーのようなデジタル家電から白物家電までを販売する総合電機メーカーだが、国内では携帯のイメージを高め、「携帯も作っているLGが出している冷蔵庫」といったような形で全体のイメージを向上させていく戦略も描いている。
L-01A |
そのため、日本における携帯事業は、LGの世界戦略の中でも重要な位置づけを占めていると言えるようだ。