喜久川正樹社長

ウィルコムは22日、新しい料金プランや新端末などを発表した。音声通話料金、パケット通信料金を実質値下げしたほか、新端末では同社で初めてモバイルFeliCaを内蔵したおサイフケータイサービスに対応した。同社の喜久川政樹社長は会見で、同社の強みとして訴える「定額・低額・安心」をさらに追求していく考えを示した。また喜久川社長は、今年開始予定の次世代PHSサービス「WILLCOM CORE」に関しても言及した。

音声とデータ料金を実質値下げ

料金プランでは、同社の音声定額サービス「ウィルコム定額プラン」を「新ウィルコム定額プラン」と改定。従来通りEメール送受信とPHS同士の通話料は月額1,980円で24時間無料だが、メール以外のパケット通信を定額にするデータ定額を、従来の月額1,050円~3,800円の2段階の定額から、0円~2,800円の2段階に変更する。

従来の料金プラン(左)と新しいプラン。法人向けの「トリプルプラン」も同様に「新トリプルプラン」へと改定される

「思い切って」(喜久川社長)0円からの定額制に変更したことで、PHSからインターネット接続をしない場合は月額料金が不要となり、上限金額も2,800円に下げたことで、パケット通信料が実質的に値下げされることになる。また、PCに端末をつないでモデムとして利用する場合も2,800円の上限で利用できる。

他の携帯事業者のパケット定額制と比べ、上限金額が安いのが特徴

対PHS以外の音声料金についても、これまで「070以外もお得な通話パック」として月額1,050円で1,260円分の無料通話を含んでいたが、月額料金は変わらず、無料通話分を2,100円に増やす。

「(ウィルコムの)通話料は、他社向けも安くしているが、それが理解されていなかった」と喜久川社長。今回のプランでは実質的な通話料の値下げを行い、消費者へ通話料の安さを訴求していく。

他社向けの通話料も実質値下げとなる新通話パック

喜久川社長は、同社の「アイデンティティ」という「定額・低額・安心」という3つの価値をさらに推し進める料金改定だとした。

おサイフケータイやFlash Liteで携帯並みのサービス展開

新サービスとしては、同社としては初めておサイフケータイへ対応した「ウィルコムICサービス」を開始する。新端末2モデルにFeliCaチップを内蔵。新端末2モデルにはEdyやQuickPay、モバイルSuicaなど、人気の高いサービスをプリインストールして提供する。

対応するおサイフケータイサービス

新サービスの2つめとして、新たに端末でFlash Lite 3.1に対応、待受画面やゲームを提供する。コンテンツベンダーのインデックス、サイバードと協業してコンテンツを提供するほか、今後さらに協業先を増やしていく。

Flash Liteに対応したことでコンテンツサービスが拡充される

また、NTTコミュニケーションズが提供する公衆無線LANサービス「ホットスポット」を月額700円で利用できる「ウィルコム 無線LANオプション」を拡充し、従来の全国約4,000個所のアクセスポイントに加えて東京~大阪間を走る東海道新幹線N700系の車内と17駅の待合室で無線LANが利用できるようになる。3月から開始予定で、月額料金は変わらず700円。

昨年の東京ゲームショーにあわせて発表された「どこでもWi-Fi」の発売日も2月19日に決定した。これは、W-SIMを内蔵した無線LANアクセスポイント(AP)で、ニンテンドーDSやPSPといった無線LAN対応携帯ゲーム機をつなげば、PHS回線を使っていつでも対戦ゲームが行える。端末の頭金は4,800円で、割賦代金と通信料で月額1,980円で利用できる。

どこでもWi-Fi

スマートフォン向けのサービス「W+Radio」において、「サイマルラジオ」が利用可能になるのも新サービス。地域のコミュニティFM放送を同時にネット配信するのがサイマルラジオで、スマートフォンで地域のFM放送が聴けるようになる。

地域のFM放送が、W+Radioを使えばネット経由でいつでもどこでも聞ける

木村太郎氏

「Community SimulRadio Alliance」の代表でジャーナリストの木村太郎氏は、今回のサービスによって「ラジオが新しい時代に入るきっかけになるのではないか」と期待を寄せる。木村氏は、スマートフォンでいつでもラジオが聴けるため、「携帯というよりはラジオだと思っている」として、W-SIM対応のラジオが出れば、W+Radioでいつでもラジオが聴けるようになると話す。

端末は、ストレート型の「BAUM」と折りたたみ型の「WX340K」。いずれもおサイフケータイ、Flash Lite 3.1に対応。お気に入りメニューやガジェットもサポートする。同社は低廉な通話料金で2台目需要や、学生の連絡用として需要を伸ばしており、春商戦ではこうした若者をターゲットに訴求を図っていく考えだ。

バウムクーヘンをモチーフにしたBAUM

新「京ぽん」のW340K

喜久川社長は、販売方法の変更やそれにともなう販売台数の減少など携帯業界が昨年から「様変わりしている」と指摘。「メーカーが(端末を)作って(ウィルコムが)仕入れる流れから、メーカーと一緒にマーケットを作っていく」というやり方に移行していく考えを示す。

世界規模の不況による実体経済の低調も「感じている」という喜久川社長は、PHSが低廉な価格で利用できるためコスト削減効果があるという点を訴える。今後も音声邸定額サービスの拡充やデータ通信の高速化に加え、「真骨頂である定額・低額・安心を突き詰めていきたい」と意気込む。

次世代PHS「WILLCOM CORE」の開発は順調

今年10月をめどに本格展開を行う次世代PHSサービス「WILLCOM CORE」は、昨年12月に基地局と端末の無線局免許を取得し、東京・虎ノ門にある同社本社にはすでに第1号の基地局を設置、実際に電波を飛ばした調査などを行っていく。

WILLCOM CORE(XGP)はスケジュール通りに開発中

4月下旬には東京・山手線内の一分エリアで限定サービスを開始する予定で、カード型のデータ通信端末を提供。9月末までサービスを行う。現在のトラフィックが大きいエリアに限定することで動向を把握するためのもので、無料化それに近い料金体系で当初は提供する予定だという。

4月下旬から限定サービスを都内で開始する

WILLCOM COREでは、山形県、京都府、広島市において地域情報インフラ構築の実験にも参加していく。

地域情報インフラの例

データ通信速度を高速化するWILLCOM COREだが、これだけですべての通信をまかなうのではなく、これを核にして3G携帯電話や無線LAN、固定通信、既存PHSといったさまざまな通信方式を組み合わせて提供していく考えだ。

異なる通信メディアを組み合わせ、ユーザーに最適なソリューションを提供していく

3Gの利用については、過去に一部でNTTドコモの回線を借りてMVNO(仮想移動体通信事業者)としてサービスを展開すると報じられたが、喜久川社長は「(携帯事業者と)基本合意には至っている」としつつ具体的な内容については触れなかった。

いずれにしても同社では、イー・モバイルが躍進するデータ通信市場において、WILLCOM COREを中心としてソリューションを提供することに「全力を尽くす」(同)ことで利用者を拡大していきたい考えだ。

左から木村太郎氏、喜久川政樹社長、京セラ・通信機器関連事業本部副本部長・執行役員上席の山本康行氏、ウィルコムの土橋匡副社長