「少しでも触れられると壊れてしまいそう。そんな滴をスクリーンの中で生きよう」。難しい役に対する思いを、松雪はゆっくりと言葉に表した

映画『余命』の東京プレミアチャリティ試写会が21日、都内で催された。会場では試写会に先立って舞台挨拶が行われ、映画に出演する夫婦役の松雪泰子と椎名桔平、そして監督の生野慈朗が登場。それぞれがこの映画に対する思いを語った。

本作は、谷村志穂の同名小説を原作に、『3年B組金八先生』などのヒット作を生んだ生野慈朗がメガホンをふるう。結婚10年目にして初めて妊娠した38歳の外科医 滴(松雪泰子)。しかし、待ちに待ったその喜びを夫の良介(椎名桔平)と分かち合うもつかの間、滴に結婚前に患った乳がんが再発する。治療か出産か。病を知り尽くし、一人の女でもある彼女に苦渋の選択が迫られる。

子供を産むのか、がんの治療に専念するのか。松雪演じる滴が葛藤し、最後に下した決断とは

口が滑り、思わず映画のネタバレをしてしまった椎名。「あっ、言っちゃった」とお茶目な一面を見せるも、時すでに遅し…

難しい役どころを演じた松雪は、「とても難しい決断で、主人公の心理状態を表現し掴まえていくのが難しかったです。今でもこの物語の中の選択が、自分の中でいいのかはわからないままなんです」と告白。一方の椎名はそんな妻を支える夫役。これまた難しい役どころのはずなのだが、「後半くらいまで(妻ががんであることに)気づいてないんですよね。ですから僕は気楽な感じでやらせていただきました(笑)」とあっけらかんと話し、観客を笑わせた。もっとも、「ちゃんと話してほしい」というのが夫としての本心のようだ。

椎名は、本作のもう一つのテーマである"夫婦の絆"についても触れ、「話自体は劇的でドラマチックなシーンもありますが、夫婦の日常的な時間の共有の仕方というのが、とても豊かに描かれていると思いました」と話すと、生野監督も「お二人の演じる夫婦が、本当にセットの家に住んでるんじゃないかと思わせるような現場でのたたずまいでした」と、二人の演技が作る世界に太鼓判を押した。

また生野監督は、本作の見所を「題名からは悲しい話に思われるかもしれませんが、むしろ、生きることの力強さや美しさを感じ取ってほしい。見終わった後に、人間っていいなと思ってもらえれば嬉しい」と語り、前向きな作品であることを強調。最後に挨拶を任された松雪も、「命をもらって存在していることが本当にすばらしいことだと感じました。とてもポジティブな作品ですので、温かい気持ちを持ち帰っていただけると思っております」と観客にメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。

今回の試写会は、昨年12月より全国8都市で行われてきた「『余命』チャリティ試写会」のゴール地点となる。記念として、試写会には合計50人の妊婦が招待された。また、試写会の収益の一部が日本対がん協会に寄付されるという。会場では舞台挨拶後、日本対がん協会への贈呈式も行われた。

映画『余命』は2月7日より全国ロードショー。

(c)2008「余命」製作委員会