調査会社の米IDCは、2008年第4四半期の世界のPC出荷台数調査の結果を発表した。金融危機に端を発する世界同時不況で急速に消費が冷え込んでいるが、PC業界も無縁ではないようだ。IDCによれば、同四半期のPC出荷台数は前年同期比0.4%減の7731万台で、過去6年間で初めて減少に転じたという。過去5年間でみれば、平均年率15%増のペースで増え続けていた。また第3四半期からの減少幅も2.5%となり、例年であれば最もPC出荷の伸びるホリデーシーズンでの落ち込みが激しかったことを物語っている。

前回のITバブル崩壊以来、実に6年ぶりとなるPC出荷台数減少だが、直近のIntelの決算を見る限り想像に難くない。PCメーカーに在庫が急速に積み上がったことでIntelへの発注が減り、同社の業績を大幅に圧迫している。米国時間で15日にはIntelの2008年第4四半期決算が発表される見込みだが、同社はすでに2回の大幅業績下方修正を発表しており、かなり厳しい状況に置かれていることがわかる。

年末はネットブックなどの低価格モバイルマシンが市場を賑わせたが、状況を大きく変えるだけのパワーはなかったようだ。2008年前半は40%強の成長スピードを見せたノートPCも、第4四半期にはおよそ半分の20%というペースまで成長速度が落ちている。ミニノートPCカテゴリの製品は第4四半期におよそ500万台が出荷され、2008年全体では約1000万台に達し、ノートPC全体では7%に相当する。ミニノートPCの出荷台数は2009年に倍増するとみられる。一方で、デスクトップPCは16%マイナスと減少を続けているが、比較的小幅に収まっている。2008年通年ではPC出荷の伸びは10.5%となり、以前の予測値の15.2%を大幅に下回ることになる。IDCのアナリストらは2009年前半も厳しい状況が続くとみており、この影響が2010年まで続く可能性もあると指摘している。

地域別でみると、米国では予想を下回る水準に落ち込み、成長頭だった欧州などEMEA地域では成長率が1桁台に落ち込み、経済不況の影響が直撃した中国やインドなどのアジア地域ではかなり厳しい状況が続いている。アジア地域を中心に携帯電話事業者がミニノートPCのバンドル提供を開始しているが、これも功を奏していないのが現状のようだ。例外は日本だけで、デスクトップPCが落ち込むなか、ミニノートに代表されるノートPCが好調で、わずかながらも予想を上回る結果となった。他国に比べて経済が比較的安定していたのも影響したとみられる。

メーカー別ではHewlett-Packard (HP)が19.6%のシェアでトップを維持、Dellが13.7%でそれに続き、以下Acerが11.8%、Lenovoが7.2%、東芝が4.7%とトップ5を構成する。どのベンダーも日本以外の地域での落ち込みの影響を受けており、特に米国でのビジネスに強いDellへ直撃した形だ。Dellは出荷数ベースでも6.3%の減少となっている。一方で、大躍進を遂げたのがAcerと東芝。チャネルの開拓やGateway吸収で米国などでのビジネスを躍進したAcerは出荷数ベースで前年比25%アップ、ノートPCに注力し(日本を除く)アジア太平洋地域以外での伸びが大きかった東芝は20%のアップとなった。

なお、米国市場ではAppleが7.2%のシェアでPCメーカー4位につけている。成長率は7.5%とAcerや東芝には及ばないものの、他の大手が失速するなかで健闘している。

2008年第4四半期のPCベンダー別シェア
順位 ベンダー 4Q08出荷数 4Q08シェア 4Q07出荷数 4Q07シェア 成長率
1 HP 1519万台 19.6% 1473万台 19.0% 3.1%
2 Dell 1062万台 13.7% 1132万台 14.6% -6.3%
3 Acer 911万台 11.8% 727万台 9.4% 25.3%
4 Lenovo 555万台 7.2% 583万台 7.5% -4.8%
5 東芝 367万台 4.7% 305万台 3.9% 20.2%
その他 3317万台 42.9% 3544万台 45.6% -6.4%
合計 7731万台 100.0% 7765万台 100.0% -0.4%