2009 International CESの会場で目に付いたのが、家電をワイヤレスでネットワーク化する「WirelessHD」対応の家電群。パナソニックや東芝、ソニー、サムスンなど、多くのメーカーが出展していた。いよいよ今年、WirelessHD対応製品が出そろってくることになりそうだ。
そのWirelessHDを規格化するWirelessHDコンソーシアムは、CES 2009に合わせてWirelessHD Compliance Test Specification(CTS) 1.0を公開。同時に、対応製品をテストする「WirelessHD Authorized Test Center(ATC)」が今年第1四半期に設立されることも明らかにされた。
CTSは、WirelessHD対応を謳う製品が仕様に従っているかどうか、そしてWirelessHD対応製品同士の相互接続性が実現しているかどうかなどをテストするための手順やテスト機材などの要件を定めたもので、これをクリアすることでその製品は「WiHD」のロゴを取得できる。
WirelessHDは2006年から、室内の1080pのフルHDコンテンツを、情報を失うことなく、圧縮することもなくワイヤレスで伝送することを狙って規格化が進められてきた。2008年1月には仕様の1.0が発表され、同1月からはCTS 1.0の仕様策定が始められた。
ほぼ1年の検討の結果、今回CTS 1.0が策定され、今回のCESではテスト機器や相互互換性のデモが行われた。メーカーブースでは自社製品同士の接続だったが、WirelessHDコンソーシアムの展示では他メーカー同士の製品が接続されている様子を確認できた。
ゲームの映像を表示しているLG電子のテレビ |
このテレビに無線で接続しているのはPS3。テレビに表示されていたのは「グランツーリスモ5プロローグ」。PS3は左にあるGefenTVにつながり、そこからテレビに無線で伝送されている |
CES 2009で登場したWirelessHD対応の製品はLG電子の「LHX」「LH85」、パナソニックの「VIERA Z1」、Gefenの「GefenTV Wireless for HDMI 60GHz Extender」、そしてパナソニックと東芝のWirelessHD用アダプターのプロトタイプだ。
WirelessHD 1.0の規格では1080p・60Hzの映像を4Gbpsの通信速度で伝送でき、WirelessHD AVCプロトコルで対応機器の操作が可能。著作権保護のDTCPに対応し、映像とオーディオを10mの範囲に伝送する。今後は、下位互換性を確保しつつ規格を拡張し、将来的には120Hz、HDMI 1.3で転送可能な色数を増やしたDeep Color、3D、4K2K、1Gbps以上のデータ通信、PCの対応の拡大などを図っていく考えだ。
デモでは、LG電子のテレビ、Blu-ray Discプレイヤー、GefenTVをつないだプレイステーション3をすべてWirelessHDで接続し、別の部屋では東芝のノートPC、パナソニックのBlu-ray Discプレイヤー、パナソニックのテレビを接続する、といった状態だった。
WirelessHDの特徴として、10mの範囲内にある対応機器を設定なしで接続した場合でも、電波が透過しにくいので隣り合った室内でのデモでも混線しないことが示されていた。
テレビとプレイステーション3を接続したデモでは、レーシングゲームが違和感なく操作できており、転送速度に優れ、遅延が少ないことが分かる。PCの画面をテレビにワイヤレスで表示し、PC内の映像コンテンツを再生するデモも違和感は感じない。フルHDコンテンツの再生についても遅延なく、有線接続の時のような感覚で再生できていた。
PCの画面。PC上では動画も表示しているが、動作に違和感はない |
東芝のノートPCには、同社の「REGZA LINK」アダプターのプロトタイプが接続されていた。REGZA LINK(HDMI-CEC)と互換性があるので、接続機器の操作も可能になる |
また、WirelessHDでは、障害物があって機器同士の接続が切断すると、電波を別の方向に飛ばして接続し直すという仕組みを導入。例えば機器と機器の間を人が通過していくと、それに合わせて次々と電波を飛ばす方向を変えて接続し続けるようになっている。実際に機器同士の間を通り抜けても映像の伝送は途切れず、実用的なものに仕上がっていた。
WirelessHDは、基本的にHDMIを無線化したもので、コンソーシアムのメンバーも重なっている。両者のすみ分けとしては、拡張性で先行するHDMIに追随する形でWirelessHDのスペックも拡張していき、より高機能なHDMI、ワイヤレスのWirelessHDといった形になる見込みだ。